第参話 【本性】

放課後―

今日は部活が休みだ
久しぶりに早く帰れる

「ショウ!帰ろうぜ〜」

ミツキだ、まだ教室に居るのでこの性格でいる、本当別人だな〜

「ねぇ君の家って何処なの?」

僕は何となく聞いてみた、友達なのだから一応知っておきたい

「来るか?」
「良いの?」

で、行くことになった


+++
正門前―

今日は職員会議だとかで部活がない
て言っても俺の所属してる写真部は廃部寸前だけどな(苦笑)

「ねぇねぇ猫ちゃん何処から来たの〜?」
「きゃ〜ん可愛いぃ〜vvv」

女子達が何やら校門の前で騒いでいる、猫が居るらしい

「(猫…か、そういや最近彼奴見てねぇな)」

俺も猫を飼っている、と言うか猫の友達がいる
俺は気にもせず門を潜った

その時

「なぁーぉ」

その猫が俺に飛びついてきた

「おわっ!?あて、…あれ鈴?」

そう、その猫こそ俺の友達の雌猫、“鈴(スズ)”だったのだ

「あ〜…緑川さんだ…帰ろー何されるか分かんないしぃ」

門の前の女子達は俺の姿を見るや否帰って行った
たくよぉー俺はお前らみてぇなポンコツにゃ興味ねぇつーの(吐)

「つーか、お前今まで何処ほっつき歩いてたんだよ?心配したんだぞ」
「なお〜な(ごめ〜んネ)」
「はぁ気楽でいいな鈴(オマエ)は」

俺は鈴を肩に乗せ(と言うか乗ってきた)家路に向かう

+++
「この道って…確か神社のある通りだよね?」
「すぐそこだ、ほらアレ」

彼は自分の家を指差した、その先には神社があった

「儂の家だ」
「神龍神社…神社の子だったんだ…」
「いや、儂は居候だ」

家は神社の裏手にあった、見た目にはそんなに大きくはない
昔ながらの縁側のあるの家だ

「ただいまー」
「お、おじゃましまーす」

玄関は畳2畳程、それに繋がる廊下も同じくらい広かった

「わぁ結構大きい家に住んでるんだねミツキ…いいなぁ」
「まぁのぅ、部屋は全部で8つある、広いといえば広いな」

「ぬ?ミツキ友達かい?」

玄関近くの部屋からぬっと皺くちゃ顔が覗いた

「ジーさん!…帰ってきた早々驚かすなっ」
「わ、…だ、誰?」
「あー、この人が…
「ワシはこの神社の神主愛染じゃわい、まー何にも無い所じゃがゆっくりしとくれ〜♪」

神主…と言う事はこの人が家主さんなんだ、にしてもなんて陽気なおじいさんなんだ

「儂の部屋は2階だ、この上」

僕は玄関のすぐ隣にある階段を上った、少し急で薄暗い
階段の途中、丁度半分位を上った所に格子の付いた小窓があった、今日は閉まっていたけど
階段を上ると扉が3つあった、2つは襖、1つは開き戸だった

「ここだ、まぁ汚いがな」
「いいよ僕の部屋も似たようなものだし」

彼の部屋は襖の和室だった

「人の部屋に入るなんて久しぶりだなぁ〜、わぁ何コレ?小さい引き出しが付いてる」

6畳の部屋の壁の右側にまるで中国の漢方薬が入っている様な箪笥が存在感たっぷりにあった
その高さは天井近くまであった

「これか?この箪笥は来たときからあった、まぁ儂は小物入れにしてるがな」
「へー…にしてもえらい古風…和風な部屋だね〜やっぱ妖だから?」
「ぬ、何だ…年寄り臭いてか?」
「はは…まぁね、て言うか妖って不老ってイメージあるんだけど?ミツキって実際は何歳なの?」
「…やっぱ儂ってそんなに年寄り臭いのか〜御主と同い年だ、嘘ではないぞ?」
「そうなの?…お爺さんみたいな喋り方だからつい」
「これは癖だ!」

癖らしい、でも使い分けてるんだからかなりの演技力だよね?

「お、そうだ忘れておった」

彼はそう言うと立ち上がり箪笥の引き出しから何かを取り出した

「ショウ、面白い物を見せてやる、コレを持ってみろ」

ミツキは僕に何かを投げた
それは付箋の様な紙切れだった

「何コレ?…あ、何か色が変わった?」
「ほう、青か…やはりな御主には素質がある」
「素質?」
「これはの、妖力紙と言って力がある奴が触ると色が変わるのだ、青だから…召喚士と言った所か」
「へ?」
「つまりの、御主には儂同様妖の力があるという事だ」

僕は固まってしまった、当たり前だ、いきなり言われても意味が分からない
そして僕は暫く考えこんだ

「…〜つまり僕にもその…不思議な力があるって事、なの…?」
「そうだ、凄かろう?」
「……〜う〜ん…何だか君に会ったのがきっかけでこういう事くらいじゃ驚けないよハハ…」

僕はもう迷信を信じる人になっていた、そりゃ本物の妖怪が目の前に、友達になったんたんだから当たり前だろうけど…ね?

「召喚士って何かゲームみたいだね〜、妖を呼び出すの?」
「そうだ御主はコレが使えるか?」

ミツキは今度はお札の様な紙を僕に投げてきた
それは、

「お札?だよね?」
「その札では“鎌鼬(カマイタチ)”を呼ぶ事ができる」
「カマイタチ…?イタチの妖怪だっけ?」
「その札に向かって呼びかけてみよ、出てくるぞ」

僕は成り行き上やってみることにした

「えっ…えと、出てきて…なんて…

ボウン

一瞬煙が現れた、その中から現れたのは…

「うわっ!?」

大きさは40cm程で、川獺(カワウソ)のような可愛らしい顔だった

「きゅぅ?」とそいつは首を傾げリスみたいな鳴き声で鳴いた
が、手には鋭い鎌のような爪が生えていた


「…可愛いね…これって妖怪なの?」
「ほーう現れたな、やはり御主には札遣いとしての才能があるようだ」
「…?!札、遣い?」
「その札は御主にくれてやる、ショウならきっと使いこなせるだろうよ」

ミツキはハハと笑い僕にこの鎌鼬のお札を託した
鎌鼬はいつの間にか消えていた

 
―僕等はまだこの後に起こる大事件に巻き込まれるとは夢にも思わなかった
何故なら………