第廿陸話【養護教諭】 ※結構ほのぼの甘々風味※
六月六日の火曜日天気は昨日とは打って変わってピーカン晴れ
初夏とは思えないほど眩しく暑い太陽がギラギラと大地を照らす
気温も湿度も高い
「イイ天気〜!」
「今日は元気だなモミジ」
「だって晴れなんだよー?そう言えばあいつハーちゃんって何年だろー?」
聞きそびれちゃったなーとモミジが頭をポリと掻く
昨日の謎の少女は『早瀬凪(はやせなぎ)』と言う名前だった
彼女はほぼ何の関係も無い儂等を助けてくれた恩人だ、小柄で恐らく一年生であろうな
友達(?)のマムシを器用に操り、それはまるでインドの蛇使い様だった
「二年生ヨ〜♪お二人さんww」
『へ?』
最近聞いた声が背後から聞こえた
恐る恐る振り向くとやはりな姿があった
小柄のオカッパ頭の少女
「早瀬、か…ん?二年?」
「二組の赤枝先生のクラスだよ♪隣なのに気が付かないなんて〜しょーっくス!」
早瀬がズルッとまるでバナナの皮を踏んで滑った様な芸人滑りでオーバーリアクションをして見せた
彼女は何かと大袈裟で片仮名混じりの喋り方をする、熊田とは友人らしい…それにしても熊田の奴、どーして儂等の秘密をあっさりとバラすんだ
「ゴメンゴメン…つーか二年だったの?俺よりちっちゃー俺147pだけどハーちゃんそれよかチビだよね?」
「130p♪ちっちゃくってカワイイでしょー?テヘ☆」
ハーちゃんがペロリと舌を出す、小柄な上にとても童顔で小学生の様な彼女はまるでお人形の様に可愛かった
思わず頭をヨシヨシと撫でた、自分よりも17pも低い頭が俺を見る
「…〜〜ハーちゃん可愛いなぁ〜〜ww萌え〜萌え〜ww上目使いは犯罪だよ〜〜wwww萌え〜」
すっかり虜だ
確かに早瀬は子供的魅力…もとい母性本能をくすぐる様な娘だ、しかしモミジよデレ過ぎだろう?
「うきゃうっ☆ミジ〜…あすなろ抱きは反則だよ〜〜わっそこオッパイっ!ひゃっはははは」
「ハーちゃんの乳小ぶりで可愛いなぁ〜〜ww小柄で童顔で貧乳は萌えの三種の神器だよwwww」
「む〜貧乳は余計ぃ〜!でも萌えは許す☆」
「…の、のう御主等儂の事忘れておらんか?」
「ツッキー♪…空気100%☆」
「誰が空気じゃ!〜…しかし御主儂等の事を知っておるが怖くはないのか?」
「怖い?ナニが??面白いヨ♪強いて怖いと言うなら知らないままの方が怖イヨー?だってサー妖って面白いじゃん?ワクワクするんだよね♪」
妖以外の彼奴等には必ずする質問だ
その答えは皆「怖くない」、しかしワクワクすると言う回答は彼女だけである
「そうか怖くないか…有難う、そうだ早瀬御主これを持て」そう言って儂は例のアレをポケットから取り出した
「ミツーそれ妖力紙(ヨウリョクシ)だよな?…もしかしてハーちゃんも?」
「念の為だ、偶然なのか儂等の周りに居る奴は皆その手の能力を持っているからの〜念の為だ」
「ヨーリョクシ…何ソレ?葉っぱの中にある奴?」
「それは葉緑体だ…これは妖力紙と言ってその者に儂等と同様、または似た様な能力があるかを調べる事が出来る道具だ」
「…リトマス紙?もしかして触ったりとか息掛けたりしたら色が変わるとか?」
「その通りだ、と言う訳だ早よう触れホレ」
「↑台詞だけだったらセクハラ臭いネー♪イイヨっ☆でもボクに能力が無くてもキオク消さないでよ〜知ってんだよー烏天狗は記憶を隠蔽しちゃう技を持ってるっテー?」
早瀬は自分の知っている知識をベラベラと喋りながら妖力紙に触れる
彼女が紙に触れると触れた部分からボロボロと枯れる様に紙が破れていった、色は勿論人間だから青だった
「この反応は!…土の属性だな」
「ツッチー?土田?お笑いの?」
「…そっちじゃない!土属性と言う意味だ、まぁ属性の中では割かし地味な方だな〜技もこれと言ってある訳でもないし…武力系だな」
「武力ってーまぁケンカは結構トクイだけどサー♪地味なのカヨさーん」
「…すまんが地味だ」
「しかし御主にはあの蛇が居るではないか?花子だっけ?」
「ハナちゃんっ!ダヨ♪ソレト蛇じゃなくてマムシ!ねっハナちゃん?」
そう言うと彼女の首の後ろから昨日のマムシが姿を現した
思わず一歩下がる
「…〜ぎゃぁ…それマムシ?」モミジがビビる、意外な反応に思わず目が丸くなった
「そうだよー?可愛いでしょハナちゃんって言うのダー♪」
「…マムシって虫じゃないよな?」
「どう見たって蛇の仲間だろう?しかしどーしたモミジ」
「あ…はー…俺虫とかこう言う系って苦手なんだよね〜…ゴメン怖い…」目が半泣き状態だった
意外だった、モミジは怖いもの知らずで虫でも何でも平気だとばかり思っていたからだ
そんな彼女がまさか
「ごめん〜その子どっかやってぇ〜…」そう言って儂の背後にスッと隠れた
手を震わせながらカタカタと小さく震えている、本当に苦手なのだろう
「マムシ苦手なの?…ガーンショック!て言うか平気そうな顔してんのに苦手だなんて…萌えじゃん?」
早瀬の目がキラキラ輝いて見えた
儂はこの娘、早瀬はモミジと同類なのだと確信した、彼女はモミジの両手を握って上下にブンブン振った、顔はニコニコ笑顔だ
「萌えって…ハーちゃんもソッチ系?」
「ソッチ系♪」
モミジまで目をキラキラさせてニコニコ笑う
何だか儂、除け者?かと言うくらいに…(寂)
「オーイ二人共ー」
『居たの?』
「御主等…(怒)」
二人はすっかり仲良しだ、昨日はあんな事があったのに…
「のうモミジ、昨日事だが…あの後はどうなったのだ?御主今朝職員室に呼び出しをくらっておっただろう?聞いたんだろ?」
「あー…うん聞いた」
「で…奴等は如何なったのだ?」
「死刑」
「そうか…ってえぇーっ!?」
「ウソだよ、本当はまだ事情聴取中で詳しい事はよく分からないんだってー…でも二人共殺人は認めてるから少年院行きは間違いないだろうってさー」
「それなら良いが…しかし何故殺人なんか…」
「それも聞いたよー動機は単純、この間の中間考査で自分達より成績が良かったからムカついたってさー、単純だよね〜そんなクッダラナイ理由で
人を殺すなんてね〜…世の中腐ってるよねぇ?」
「…そうだな…(しかしモミジよ、そんな話を笑顔で話すなよ)そんな理由で殺人なんて正直ふざけてるよな…」
「笑顔でこんな話をするなって?…ほーんとふざけてるよな〜アイツ等シネバイイノニ…あっはっはっはー」
「怖い怖い怖い!!…〜あのなぁー御主〜…?御主また儂の心を読んだのか?」
「はははははははははははhhhhhhh」
「誰か止めてくれーーー!!!」
「トマらnananananaiiiiiiiiiー!」
キリが無いのでこの辺でモミジの頭を軽〜く叩いた
彼女は眠たそうな鶏の様な目儂を見た
「そう言えば昨日は柊も居たけど…?」
「何だ?…あー…彼奴も調べた方が良いか?か?」
コクンとモミジが頷く、確かに儂の周りにはその手の者が多いが
柊先生にその力があると言うのは…
「ヒイラギちんもボクと同じチカラがあるってコトコト〜?」
「あくまで可能性だ、しかし…あるやもしれんしのーうむ」
「オマエ等ンなトコに居たのかよ?」屋上の分厚い鉄扉を開けてやって来たのは
「柊ー!よぉ朝ぶり〜柊もココで昼ゴハン?」
モミジがコイコイと手招きをする、柊先生は片手に白いビニール袋を提げていた
購買部で買ったパンが小さな袋一杯にギッシリと入っていた
「おーよ…しっかしなぁ〜…っふぃほーふぁんふぁほほふぁふぁっふぁほひふぉーふぁ…ふぁー?」
「頼むからせめて飲み込んでからにしてくれ」
彼は口に一杯のパンを詰め込んでモゴモゴしながら喋っていた
その所為で奴が何を言っているかは分からなかった、彼は床に置いてある牛乳パックを手に取り一気に飲み干した
一瞬にしてパックがベコンと凹む
「あー…やべ全部飲んじまったわー」
「柊っ!…〜そうだ御主昨日の奴等が如何なったのか教えてくれぬか?」
丁度先生なのでこの機会に気になる事を聞いてみようと質問をした
「そりゃー構わねーが、…ホムラぁーオマエ先生に向かってその口の利き方はねぇんじゃねーの?言っとくがオレはこんなナリでも一応教師だぞ?
養護教諭だがな」
「……す、すいません柊先生」
「宜しい!…っぷはっくっくっくっ…はーっはっはっはっ!!ひぃー可笑しいぜホムラよぉ〜(笑)」
柊先生が腹を抱えて笑う、儂は意味が分からなくて首を横に傾げた
彼は堪らなく可笑しいのか笑い涙が見えていた、正直そんなに笑われると気分が悪い
「悪ぃ悪ぃ、昨日の男子生徒か?あーアイツ等は少年院行きが決まったよ」
「それ本当かっ!?」
「モミジ!…って本当なのか?」
「本当も何も俺はさっき校長から聞いたんだ、間違いねぇよ?何なら校長本人に確認してみるか?」
「それはいい」と言って首を横に振った
流石にボス…校長に直接訊ねるのは出来ない、特に儂の後ろにはモミジがいる…彼女はこの学園の校長からもあまり好かれていない
だからそう言う事は出来るだけ避けたいのだ、儂はそんな事を考えながら右隣にいる彼女をチラリと見た、それに気が付いたのかモミジが儂の方を見た
「そーか?こんなチャンスめったにねーぞ(笑)」
「そんなチャンス要りませんよ」
儂は願い下げだ、と言う顔をし溜息を吐いた
「…どーしたよ?オレ何か言っちゃイケナイ事言っちゃたか?…何か良く知らねぇけどゴメンな」柊先生が申し訳なさそうにコクンと頸を下げた
そんな様子を見て儂はハッとした、そしてすぐに彼に謝った、柊先生は何だかよく分からないといった表情で左手で頬をポリポリと掻いた
「ミツもしかして俺に気を使ってくれたん?」
「へ?あっ…///いっいや別にそう言う訳じゃないぞ!…う、うむ」
コホン、小さくワザとらしい咳払いをしてみせた
彼女本人にそう言われると何だか照れ臭い、その様子を見ていた目の前に座っている早瀬が笑いを堪えているのを見て思わず紅潮する
「あんだぁ〜?」と、一人柊先生だけが頸を傾げていた
早瀬が「子供の事情っス♪」とおどけて笑う
「んにしても…変だよなぁ?」
「何がですか柊先生?」
「オレさー昨日なっがーい仕事終えてアパートに帰って思い出したんだけどよー…」
「何をですか?」
「緑川2号が言ってた事だよ?…2号オマエさー昨日、『助けてって声が聞こえたから行ってみたらコイツが倒れてた』って言ってたよな?」
「お、おう…そーだよ、んで柊んトコ連れてったら死んでて俺が疑われて…誰も助けてくれないし…つーか俺さ柊だけは信頼できる男だって思ってたのに…
思いっ切り信じてくんなかったし…本気で辛かったんだぞっ!途中でハーちゃんが助けてくんなかったら俺…」
「心配すんなって、オレは何があってもオマエを助ける!昨日のあれは犯人が誰なのか調べてたんだよ」
「っ…だったらコソっとでも良いから教えてよ!…柊のバカぁ」
「良いカンジだねぇ〜♪」早瀬がニヤニヤと笑う
彼女は儂を見ながら「オンナノコってさー年上のオトコに弱いんだよねぇ〜〜?取られちゃったらどうスル〜?プクク〜〜♪」と言いながら笑っている
かなりムカつくその顔を思いっ切り殴りたい衝動に駆られたがグッと我慢した
「儂のモミジがあんな軽そうな男なんかに引っかかるかっ!」そう言って反論した
その台詞が面白かったのか可笑しかったのかまた早瀬が笑う、気にするのが面倒だったのであえて無視した、彼女が意外だなと言わんばかりの顔で目を丸くした
「ひゃっ///」と、突然モミジの悲鳴が聞こえた
儂は隣に座っている彼女を見た
「ちょっ…柊っ///どこ触ってんだよ!」
「何処って?腰に手ェ回しただけじゃん?ん〜…もしかしてこういうの慣れてねぇの?可愛いね〜w」
「ひっ柊///…あっちょあっくすぐったいっ…」
「だぁーーーーっ!!!!!!!何してんだよっ!!!!!」思わず勢い良くツッコんだ
耐え難い、屋上で仮にも教師が生徒とが白昼堂々抱き合ってイチャイチャと…という以前にモミジに手ぇ出すなぁっ!!!
儂は立ち上がり彼女をギュッと抱きしめている変態養護教諭の後ろ側に行って彼の背中を思いっ切り蹴った
「ぎゃっ!!??」と、柊先生の悲鳴が一瞬だが屋上に響く
と同時に彼に抱かれているモミジも小さく悲鳴を上げた、儂はしまったと冷や汗を掻いた、頭に血が上っていた所為で彼女がいた事を一瞬忘れてしまっていたのだ
すぐさまモミジに謝って怯んだ柊先生から引き剥がした
「大丈夫かモミジ?…すまぬ」
「柊っ!大丈夫ーっ?」
「アレ…?」
助けたのも束の間、モミジは儂が蹴り飛ばした変態の方に駆け寄って行った
思わず顎が落ちる、その様子を見ていた早瀬が堪え切れなかったのか思いっ切り大爆笑していた
「ゴメンなーミツが思いっ切り蹴っちゃって…背中だろー?立てるか?肩貸そうか?」
「あ…あぁ悪ぃなーたくっおいホムラっ!!何処の世界に教師蹴る生徒が居るかーっ!」
「此処に居ますよ柊変態養護教諭…つーかモミジっ!御主は無防備過ぎるぞっ!もうちっと用心しろ!」
「え?」
「て言うかー昨日ヒイラギちん生徒蹴ったじゃん?お互いサマーじゃん♪という訳でプンプンお了い」早瀬が仕切った
儂は仕方なく…いや渋々柊先生に謝った、あんな変態でも一応教師だしこの事を校長にでも言われたら儂が終了してしまう…流石にそれは避けたい
「〜…おっと何だっけ?…そうそう、2号オマエ悲鳴聞いて駆け付けたんだよな?」
「うん、そうだよ」
「で、すぐにオレん所来たんだよな?莉紗子チャン何処に居たの?」
「何処って…本棟の東の端っこだよ、俺西側から歩いて来たから前の方が騒がしいなーってだから如何したんだろうって?…放課後だったし誰も居なかったし」
「距離にして約30mくらい…か、やっぱ変だな」
「??何が?」
「確かにーヘンテコだよね〜♪」
「あぁ時間が合わない」
「時間?何の時間だ柊先生?」
「死後硬直の時間だよ?…だってフツー2時間くらい経たねぇと始まんないからなー…それがオレの所に来てほんの数分後だぜ?どう考えてもおかしいだろ?」
「ダネ★死後硬直はATPの枯渇で進行するんだヨネ♪んでもってー30〜40時間経たないと硬直は解けないんだよね〜」
「この時期だから一時間半くらいで始まったとしても時間が合わないしなーって…早瀬オマエ何でそんな事知ってんだよ?」
「本で見タ♪デサーその硬直が解けたのがお肉で言ったら熟成なんだよね〜、ア〜でもATPって運動の後だとフツウより少ないンダヨネー?」
「…けど莉紗子チャン汗なんて掻いて無かったぞ?…それに莉紗子チャンのクラスは六時間目は家庭科で教室だったらしいからな」
「…ちょっちょっと!それじゃぁ俺が聞いた先輩の声って?」
「オバケだね〜♪ウラメシヤ〜」
モミジが本気でビビっている、それを面白がって早瀬は煽る様にお化けのポーズをして脅かした
モミジは余程怖かったのかサッと儂の後ろに隠れた
「お…俺霊感あるから時々見ちゃうんだよねー……つーかさ今冷静に考えたんだけど、昨日俺美作先輩担いで保健室行ったじゃん?つー事はさ俺…
二時間くらい前に死んだ先輩背負ったんだよね?死体背負ったんだよね?…今更だけどどーしよう…?」
「まっ時期的に出てもオカシクないよねー?オバケちゃん」
「ギャぁぁぁーーっ!!止めてーつーか俺さ今まで結構お化け見てきたよ…声も聞いたことあるよ…でもさー死体は背負った事無いよ!」
わぁとモミジが喚いて儂に抱きついてきた、彼女は儂の背中でブルブルと震えている
先程早瀬のマムシを見た時にもそうだったがモミジは意外と女の子らしい一面があるのだ、儂は首を後ろに向けて「大丈夫だ安心しろ」と励ました
しかし依然としてぎゅっと抱きついたままだ、まぁ儂的にはとても嬉しい状況なんだけどな、そう思いながら小さく笑った
「わ…笑うなよバカぁ〜///(でも人肌って安心するなぁ〜…ミツって体温高いし…何だか眠くなっちゃった……)」
「?…モミジ?おーい如何した?」背中に抱きついている彼女が急に動かなくなったので心配になった
その様子を見ていた二人が「寝てるよ」と、後ろを見ると立ったまますやすや眠るモミジの頭が見えた、器用だなーと思いつつ如何しようと困った
「御主な〜…///たくっ…」
炎天下の中無防備に、しかも器用に立って寝るなんて…本当に面白いヤツだなぁ
とりあえずこのままでは埒が明かないので、目の前で見ていた柊先生に手伝って貰ってモミジをおんぶしてそのまま教室に連れて行った
その後ろを小走りで早瀬が付いて来る、屋上に置いたままになっていた儂とモミジの弁当箱を持って来てくれたのだ
「すまぬな二人共…おっと柊先生!放課後時間あるか?」
儂はある事を思い出して柊先生を呼び止めた、彼は後ろを振り向くとだるそうな表情で儂を見た
「…職員会議が四時まであるけど、その後は別に予定はないぞ?何だ?相談か?」
「まぁ、みたいなもんだ…御主に会いたい」
「…OK、脚広げて待ってな」そう言って彼は踵を返し再び歩き出した
奴が行って暫くして本鈴が鳴った
「(そう言えば脚って何だ?)」儂は先程柊先生が言った言葉の意味が分からなかった
+++
放課後…
昼間と打って変わって今は天気が悪い、五分前は小雨が降っていたくらいだ
そのお陰で気温はぐっと下がって過し易くなっていた
「…〜ミツー俺も残ろっか?一人じゃ寂しくね?」
時間までまだ四十分くらいある、儂は昇降口の壁にもたれ掛かってケータイを弄っていた
その隣でモミジが儂のケータイを覗き込んでいた
「覗くなよ、あっアウトっ!」
「今ので3回失敗だなー俺の方が上手くやれるよ」
最近流行りのケータイゲーム『ケシモジ』を最近ダウンロードしたばかりで儂はそのゲームにハマっていた
このゲームのルールは簡単で、5×5マスの中にランダムにアルファベットが書かれていて、その中に隠されている英単語を見付け出し
それ以外のアルファベットをクリックして消していくのだ
例えば、答えが『HAPPY』ならその答えを消す前に探し出し、それ以外の外れのアルファベットを消してゆく
だが、答えが分からず適当に消してゆき答えに使われるアルファベッドを間違って消してしまうと、その時点でアウトになってしまう
しかも、1ステージを5問中3問間違うとまた最初からやり直しになってしまう、勿論、どのステージに進んでも3問間違ってしまうとまた最初から
スタートからやり直しになる、儂はこのゲームで全6ステージあるがどう頑張っても5ステージにしか辿り着いたことがない
「…御主は元々英語か得意だからなぁ〜と言うかこのゲーム、ステージが進むにつれて単語が難しくなって中2の儂にはムリだよ」
「そらそうだよ☆だって4くらいから高校生レベルだもんコレ、しかも時々スラングとか略語とかも混ざってるからね〜」
「そりゃムリやって!」
ミツはケータイをおでこにコツンと当てておちゃらけた、時々だが彼は突拍子もないギャグを言う事がある
外面が真面目なヒトなのでそういう所を見るとリアクションに困ってしまう
「…じゃー俺は帰るよ?あ、柊に妖力紙(ヨウリョクシ)触らせるんだろ?」
「そうだ、まぁ念の為だ」
「Do its best!(まぁ、頑張って)」
そう言って俺はミツの肩をポンと叩いて昇降口を後にした
「行ったか…さーて次は全ステージクリアしてやるぞ!」
儂は再びゲームに戻った
+++
「遅くなっちまったなぁー…つーか何処に居るんだよ?ホムラの奴は…」
今日の職員会議はいつもより十分程長引いた、まぁこの時期は暖かくなってきた所為かポコポコと不良が多くなっていたりして
仕方がないがな…
オレは廊下を歩きながら首をキョロキョロさせてホムラを探した
「帰っちまったかー…む?」見つけた、昇降口の壁にもたれ掛かって座っている奴の姿を見付けた
手に何か持ってるな…あー…ケータイか
「オイ!それは校則違反じゃないのかね?」
オレは教頭の真似をしてワザとらしく言ってみた、案の定ホムラはビックリしたのか持っていたケータイを落とした
トンという音が響いた
「っ…アハハハハ!オレだよホムラ、よぉ待たせたなハニーちゃんw」
「……柊先生かよっ!脅かすなよーあー…ケータイ落ちたし」
「でも、一応ソレは違反だかんな?まぁオレは没収とかタルイ事はしないけどなー」
「恩に着る」
儂は急いでケータイを拾って床に放置してある鞄に突っ込んだ
「でー…ホムラのベイビーちゃんはオレに何の用かなぁー?」
「うむ…此処じゃ出来ないから場所を変えぬか?」
儂は立ちあがって柊先生の手を引いて人に見つかりにくい場所を探した
階段の下は狭すぎるな、そうだ校舎の裏にしよう
「此処なら人に見つからないだろう…うむ!」
「しっかし…ホムラお前って意外に大胆だよなぁ?こんな所にセンコー連れてくるたぁ」
「へ?」
「ヤリたいんだろ?」
儂は暫く意味が分からなかった、だがしかしその意味が分かった瞬間ぞわっと鳥肌が立った
「っ!!!!!違う違う違うっ!!!!!!!!!!!勘違いするなぁぁぁぁ!!」
儂は柊先生から慌てて離れた、しかし奴の眼は鈍く光っていた、ヤバい狩られる…
思わず泣きそうになる
「そんなにビビんなよ?…そっか会いたいなんて言うからってきり…」
「ある訳ないわぁ!!!!!死んでもあり得んわあ!」
叫びと共に涙が零れた、それを見た柊先生は慌てた
「あぁ〜…あ〜…違うちがうんだぁ〜…っひっく…」次から次に涙が溢れ出る、四月の末に起きたあの悪夢の事を思い出してしまったのだ
あの恐怖が鮮明に脳裏に蘇ってきて脚が震える
「違うんだよぉぉ〜〜〜…あぁぁ〜…」
「…っとぉー…泣く事か?チッ仕方ねぇなぁー」
トン、何かが儂の頭に触れた
恐る恐る顔を上げるとそこには柊先生が立っていた、涙で良く見えなかったが多分笑っていたと思う
ヨシヨシと何度も頭を撫でられた、少し屈辱だったが今は全く余裕がなかった
「…その色々すまぬ」
「生徒が謝んなよ、勘違いしちまって悪かったな」
「少し前に似たような事をされてそれを思い出してな…っ」
思い出したらまた涙が出てきた
「…前ってどーいう事だよ?」
オレは隣に座っているホムラの肩をグッと掴んだ
「っ…今はおらんが…篠村だ、彼奴にヤラれたんだ」
「…あンの野郎…無理矢理か?」
「あぁ…正直トラウマだ」
「怖かったろうに…大丈夫か?」
「もう平気だ…しかし、今まであまり怖いと思った事が無かったから…しかし流石にアレは恐怖だったな……」
「…オレの先輩に腕のいい精神科医がいるんだが紹介してやろうか?保険は効かねえけど」
「?…い、いやそこまでは…て言うか柊先生そこまで親身になんなくても?」
「お前はオレの学校の生徒だ!センコーが生徒守んねぇでどうすんだよ?…お前見てると是が非でも守りたくなるんだよ!」
柊先生の目は真剣だった、思わずドキッとしてしまった
こんなに自分の事をちゃんと見てくれている先生は今まで会った事が無かった、儂はこの先生が心から格好良いと思った
「…〜だからって何顔赤らめてんだよ?ホント可愛いなお前は」
「…///〜ちっ違うぞっ!」
+++
「あっ…そうだこんな事をしてる場合じゃなかった!」そう言って儂はズボンのポケットからアレを取り出した
「のぅ柊先生、この紙を触ってくれんか?」
スッと隣の彼の顔の前に妖力紙を差し出した、柊先生は「?」という顔をして目を丸くして不思議そうにソレを見つめた
「何だコレ?」そう言って彼は妖力紙を受け取った、瞬間紙は青く変色してポタポタと水が滴ってきた
「っ!!!あんだぁこりゃ?!いきなり水が出てきやがった?…ってオイ何笑ってんだよ?コエーよ!」
「クッハハハハハ…凄すぎるぞ!もう何人目だ?」
「一体何だよ…おいホムラおまっ…!!!!」
儂は彼奴が仲間だと確信した瞬間立ち上がり正体を明かした、柊先生は儂の烏天狗の姿に驚いた様子で固まっていた
数回漆黒の羽をバタつかせそよ風を起こした
「儂は妖、烏天狗だ!そして御主、柊先生もそれと同様の能力がある!」
「…妖?…って妖怪っ!!!!…こんなチビ助が妖怪?」
「チビじゃなぁーいっ!166pもあるしっ!」
「…いやオレからしたらチビだよ、つーか妖怪の癖に怖くねぇな…可愛いし」
「…可愛い言うなよバカ///」
「で、何か戦う系なのか?」
「………いや、特には無い」
「ねぇのかよ」
彼は立ち上がりはぁと溜息を吐いた
「何だ柊先生?」
「いや…普通ココはなぁ?…「悪の妖怪と闘うぞ!」みたいなーなぁ?…ねぇのかよ?」
「ないな」
「んなキッパリ言わんでも」
「ん?どした柊」
「いや…何でもねぇわ(つまんねー)」
「まぁ…無い事も無いかも知れんが……多分」
「多分って」
オレは小さく溜息を吐きながら立ち上がった
「慰めて損したわホント」
「む?あぁ、ありがとう柊!」
良い顔して笑いやがる、これだから子供は
まぁ…良かったよ
「ホムラ、コーヒー飲むか?」
オレ達は校舎裏を後にした
歩きながら空を見上げると一羽の鴉がオレ達の上を旋回していた
「(…烏天狗の上を鴉が旋回…ギャグか)」
「(あぁそう言えば今日は悪魔の誕生日か…今日のオレは運が悪かったんだなー、まっ暫くはコイツに付いて行ってやるか)」(※6月6日はオーメン(悪魔)の生まれた日です。)
ぬるいそよ風が頬にあたる
+++
保健室―先程まで雨が降ってた所為か薄暗く何か出そうな雰囲気がした
気温も昼間より低く恐らく体感温度は気温より涼しく感じているだろう
「ホムラぁーコーヒーはインスタントとインスタントどっちが良い?」
「柊センセーそれどっちもインスタントですよー」
「じゃぁ間を取ってインスタントで」と柊先生ははにかんだ
この教師は先生の癖に生徒に優しくて、特に女子生徒からの人気は絶大だった、まぁ…教師軍団の中では一番若いのも人気の要因の一つだろうが
「そう言えば先生って何歳なんだ?」
「薮棒だなー見たまんまよ〜」
「…20代なのは分かるけど…25、6くらいか?」
「そんなにイッテねーべよ、まだ23歳だし…つーかオレってそんなに老けて見えんの?」
「…予想外でした」
「そのネタ古いよ、まー…イッテ見えんのも大人の魅力って奴か?ハハハ」
彼は大口を開けて馬鹿みたいに笑ってみせた、確かにこんな性格だしまだ若いかと、一人納得して小さくコクンと頷いた
それを見ていた柊先生は意味を分かったのか不服そうな顔をしていた、思わず笑みが零れる
「元気出たなヨシヨシ」そう言って柊先生が儂の頭を撫でくり回す、癖のある髪が余計ボサボサになる、儂は「わぁ」と言って少し抵抗した
「さーて、これ以上は流石に親御さんが心配するだろうしーかえっか?」
「うむ、あー…でも儂コッチに親いないんだけど」
そう言うと柊先生が苦い顔をした、思わず胸が苦しくなった
儂はすぐ様簡単にだったが説明をした
「…ウマウマで〜…という訳なんだが」
「住む次元が違うってか?…〜そりゃぁ親恋しいねぇ〜寂しいだろー?」
「いや、寂しさはない…まぁ何て言うかアレでコレだからな」
「…家出か?」彼が確信を突いてきた、正しくそうだった
儂は去年の秋に実家から飛び出してジイさんの所に転がり込んでいる、母親のある癖が嫌で家を飛び出して来たのだ
元々、母子家庭なので父親という逃げ道が無かったのだが…儂は小さく溜息を漏らした
「(ホムラの前では家族の話はタブーか…)」
オレは一人そう納得した、少し寂しい気持ちもしたが…
+++
「すまぬ家まで送ってくれて…」
「センコーが生徒家まで送るのは当たり前だろーが…あーアイゼンさんだっけ?に宜しくな、んじゃっ!」
柊先生は儂を家の前まで送ってくれた、彼は白い軽自動車(恐らく中古車)に乗って神社の右側へと消えて行った
今夜は夕方より少し気温が高かった
生温い風が頬に当たって気持ち悪い
「あー!!馬鹿が帰ってきたぞー!ジイちゃぁーん不良少年帰還したよー!」玄関の硝子戸を開けた途端にモミジに叫ばれた
その声を聞きつけてこの家の主、ジイさんこと愛染神主がバタバタと小走りでやって来た、その顔は心配したよという様な顔だった
儂は一言「ただいま」と元気良く言った
『おかえりっ!』
二人が笑顔で迎えてくれた
今日は何故だか心が暖かくなった
*あとの萌えがき*
甘甘…爽やかに歳の差BL(ベーコンレタス)ww
初期設定ではこんな関係にする予定では無かったのですが…書いているウチに手元が狂いましたwww(嘘つけ)
しかし、ついに彼を出してしまうとは…
”柊咲(ひいらぎさき)”は女の子みたいな名前の男気のあるキャラにしようとキャラを考える時に決めてはいたんですが…。なんか違う(笑)
これじゃぁ優しい先生じゃん!(ツッコミ)まぁ他のキャラ達がお子様ばかりなのでこういう”マイルド系大人男子(笑)”が居ても良いかなって。(ホントはワイルド系見境ナシ女好き変態養護教諭にする予定でした…)
まぁこれはコレでアリかw
と言う訳で(また)仲間一人追加です♪
因みに咲ちゃんは彼女いない歴6年(not童貞)の寂しい非リア充さんです(哀)随時恋人募集中だそうで…(笑)
好きなタイプは家庭的で活発な娘だそうwww