第廿参話【技術革新】



「…Oh my god!!!!」

五月は末の二九日の日曜日―
今日の天気は見事な晴天、最近は気温も高く生温い風がそよそよと吹いている
儂の頬にその生温い風が当たる

「ちょっ…ミカさんっ!!!これはどう言う事なのかしらっ??」モミジがおらぶ
彼女はまるでベル○ラのキャラクターの様に白目でヒィと言う様な顔をした
それと言うのも…

「ただの携帯電話じゃない?これが如何したのよ〜?」

先程、叶が家に来て二人に良い物をあげると言って小さなピンク色のトランクをお膳の上に置いた
叶はニヤニヤしながらそのトランクを開けるとその中に二つ携帯電話が入っていたのだ
彼女は父親が最近某有名携帯会社と取引をしてスポンサーになったから儂等にその携帯のモニターになって欲しいと言って来たのだ

儂もモミジもまだ中学生なのでそんな物は勿論、他のクラスメートも持っている子はあまりいなかった
と言うか、持っていても学校に持ってきてはいけない校則があった

「いや…だって……」
「だから二人にこの携帯を使ってモニターになって欲しいのよ?パパだってそう言ってたし…ね、良いでしょうモミジ、火群君?」

叶が上目遣いで儂とモミジを見る
儂は「構わぬよ」と返事をした、モミジは…

「良いけど…学校に持って行けないんじゃ意味なくね?…それに俺達ミカと違って貧乏だし通信料金払えないよ?」
「確かにのージイさんだってそんな金無いだろうし…」
「通信料金も基本料もウチ持ちに決まってるじゃないの〜?領収書はウチに届くから安心して」

『それなら良いよ(良いぞ)』儂とモミジは異口同音でそう答えた
叶は「現金な人達ねぇ〜」と苦い笑いした、でもまぁ仕方がないこれが貧富の差というものだ

「でさでさっ☆俺はどっち??」

モミジが目をキラキラさせて目の前の携帯電話を見つめる
トランクには、黒い携帯と極彩色の携帯があった、見ただけでも分かるが黒い方は儂のであろう

「モミジは左のカラフルな方よ、玩具みたいで可愛いでしょう?」

そう言って叶はカラフルな方の携帯を出すとモミジ手渡した
彼女は凄く嬉しそうな顔でニヤニヤしている、よっぽど嬉しかったんだろうな、勿論儂も嬉しかった
二人とも初めての携帯電話だった

「なぁなぁ番号交換しようや!」
「安心して私の番号とアドレスと二人の仮のアドレスは既に登録してあるから☆」
「ガーン…!初めてのケータイでアドレス交換してみたかったのに〜…あっアドレス仮なんだよね??」

モミジは説明書も見ないで携帯を弄っている、儂は「むやみに扱うとおかしな事になるぞ」と言ったが彼女は話も聞かずにキーを押しまくっていた
それを見ていた叶はクスクスと笑っている

「あった『アドレスの変更』、ねぇミカこれってどうやったら変えれるの?」
「えっとねーその字の上にカーソルを持ってきてね真ん中のOKボタンを押すの、ホラここに仮のアドレスが表示されてるでしょう?これを消して書き直すの
あっでも末尾のne.jpは消しちゃ駄目よ?あっそうそうその前の社名もね」

叶はモミジの携帯画面を覗きながら指差しで説明してくれていた
儂もモミジに倣ってアドレスを変更してみた

「出来たっ♪初・俺のケータイアドレスwwねぇねぇミツはどんなのにした〜??」
「ぬ?うむ…まぁ適当にだな〜」

「二人共見せて〜♪」叶が儂等の携帯を覗き込んだ
彼女はふぅ〜んとニヤニヤした顔で儂等を見た

「何なんだ叶?」
「だって〜『maple‐maple』って」
「っ///読むなよー良いであろう他に思い付かなかったんだから…でモミジは何だ?」
「ちょっ俺のまで言う気〜?」
「えっとね〜モミジのは『blackcrow‐februarymoon』ね〜って二人共どんだけラブラブなのよ(笑)ま、初めてにしてはマトモなアドレスみたいだけど」

そう言って叶はまたニヤケ面で笑う
儂は思わずそのニヤケを見て笑ってしまった

「なぁミカのアドレスはどうやったら見れるの〜?」
「私の?…電話帳のページを開いて、左上のボタンねーそうそう」
「あった『lovelove.mydarlingisSyo』って…オゲェ〜…」
「何よその反応?良いじゃないここでくらい惚気ても」
「オゲゲゲェェェ〜ゲコッ!」

「蛙かよっ」叶がツッコむ




今日は平凡な日曜日だ

縁側は暑いくらいに日差しが眩しい
でも日差しなんかより彼女達の笑顔の方が何倍も眩しくキラキラしていた

「そうだ♪今度ストラップ買いに行こうよ」

叶が「そうね」と笑う

暖かな午後がゆっくりと過ぎて行く…―


「昼寝でもするか?」





※軽く注意書き(言い忘れていましたがこの紅い月の舞台は2013年よりも8年程昔の話です、なのでモミジと魅月の携帯は二つ折りの今で言うガラケーになります。
余談ですが2013年現在ではモミジ達は22歳の大人になってます。)

※ちなみに実果子の父親のスポンサーをしている携帯会社は「ダークネス(通称ダクネ)」と言う名前です。勿論架空ですが…元ネタは……言えません!