第弐話 【学校】

翌日、僕は何時も通りに学校に来ていた
騒がしい教室、そう、何時も通りの日常…
のはず―だった

「ショウおはよう」
「…おはよ」

ミツキだ、彼は妖怪(彼曰く妖【アヤカシ】)烏天狗なのだ
でも、何でその妖が学校に来てるんだろう?…謎だ

「どうした?腹でも痛いのか」
「はぁ…君って順応するの早いんだね」
「?」

ガラ

扉が開き一人の生徒が入ってきた、赤い長髪、オッドアイ、緑川モミジさんだ
一斉に皆が扉の周りから離れて行く
本当に嫌われ者なのだ

「ケッ…」

彼女はそう吐くと僕らが居るところまでやって来た
そして、

「はよっ☆」
「…お、おはよ」

緑川さんは何事無かったかのように明るく挨拶をして来た、彼女は強い
と、言うか気にしない性格だ

「んだよ〜?辛気臭ぇ面しやがって?」
「…お前、本当に嫌われてんだな…?」
「?…、あー良いよ俺も嫌いだしよ」

彼女がそう言った瞬間、教室中の生徒の視線が彼女に向かった
彼女は目だけを後ろに向け、目で彼らを笑った
その顔はどこか勝ち誇っていた、何故だろう…?

「(一匹狼…は強いんだ…)」

僕は心の中でそう呟いた


+++
昼休み―

今日は中庭に来ていた、屋上は立ち入り禁止になってしまったからだけど

「〜…相変わらずモテモテだねぇ、授業が終わる度に女子達が寄ってくるなんてさ」
「御主だって人気ではないか?あ〜…儂は疲れた…女子は苦手だ」
「うっわ…それ他の男子が聞いたら怒るよハハ」

僕は今日もミツキと居た、何だかポジションが決まっているみたいに
その所為か最近は本来の友人等が誘いに来ないけどね…

「キャァ〜!ホムラ君と木村君よー!!」

また女子だ

「わぁ〜…どうする?逃げる?」
「うむ」

僕等はベンチから立ち上がり彼女達が来る方向と逆に走ろうとした、
が、その時

「つっかまえた☆逃げなくてもいいじゃない〜?」

捕まってしまった、僕等は抵抗する前にあっさりと彼女等に囲まれてしまったのだ

「コレお弁当作ったんだけど食べて〜」
「ズルイ!あたしのを食べ…
「抜け駆けすんなっ!パンのがいいよね〜」
「あ〜◎▲□×;:@「」・。〜〜…」

その数ざっと30人くらい…人ゴミいやおしくらまんじゅう状態だ

「ちょっき、君達っ…

その時、

「だぁーーーるっせぇなっ!!!何の騒ぎじゃいっ!?」

木の上から声がした、緑川さんだ

「うわっキモいのが居るよ〜…逃げよ」
「殺されるもんね」

彼女が出てきたお陰で集っていた女子達が皆居なくなった

「…モミジ?!」
「緑川さん?どうしてまた君が?」

彼女はタッと木から飛び降りると、僕等の前にやってきた

「ん〜昼寝さね、おんまえら本当に人気モンだよな?お、べんと貰ったん?一個俺にくれよ?」
「はは…また昼寝してたんだ、良いよこんなに食べきれないし」

彼女は僕とミツキが彼女達から貰った弁当を残らず手に取ると、ベンチに座り食べだした

「お、俺の好物唐揚じゃん♪Lucky☆」
「君ってホント変わってるよね?クラスの前じゃ刺々しいのに」
「お前等と一緒だよ」
「へ?どういう意味?」
「類は友を呼ぶ!じゃね?ん〜旨っ」

緑川さんは本当に変わっている、と、言っても最近知ったんだけど…
何でこんなに明るい娘が嫌われるんだろう?僕は結構好きなんだけどなぁ

その時、

「お、1年の木村?図書委員の野々山先生が呼んでたぞー今日当番なんだろ」

体育の勝田先生だ

「あ、…そうだった、ゴメン二人共僕行くね」
「わった」

緑川さんは笑顔でフリフリと僕に手を振ってくれた、ミツキは見ているだけだった


+++
「ごっそさん♪」

モミジは数分で貰った弁当10個を全て食べ尽くした
女子とは思えない胃袋だ…

「のぅモミジ、御主…何故あんなにも嫌われておるのだ?」
「〜…唐突だなぁ、何でって…多分見た目かな?髪赤いし…ま、ずっとだし気にしちゃねーけんどな…」
「好かれようと努力せんのか?」
「…るせぇな、してるし…でも駄目」
「御主ポジティブなのかネガティブなのかはっきりせんな〜」
「………」

儂のその一言でモミジは黙ってしまった

「すまん…言い過ぎた」
「良いよ…」

「あーっら緑川さん!ホムラ君を独り占めだなんて女の子達が知ったらどうなるかしらねぇ〜?」

嫌味な声、確か学級委員の叶 実果子(カノウミカコ)だったか
色素の薄い瞳に明るい茶のハネ髪を頭の後ろで二つにくくっている

「っミカっ!!てめぇ何の用だ?!」
「あら?いきなりそれ?酷いわね〜、今日は貴方に大事なお話があって来たのよ、右子、左子いらっしゃい」

叶がそう言うと儂等が座っておったベンチの後ろの方から何者かが出てきた

「叶さん…いいですよ、緑川さんに言ったって…」
「そうですよこんなバケモノ話したって無駄ですよ」
「お黙り!彼女達は角田右子と介野左子、お分かりよね私が言いたいことが?」

黒のショートの角田右子、同じく黒の長髪のお下げの介野左子彼女等は頭や腕、足に包帯を巻いていた

「…はぁ?何が言いたいかサッパリなんだけど?」
「しらばっくれても無駄よ!彼女達は貴方にやられちゃって言っているのよ?まさかお忘れ?」
「俺が彼奴等に暴行したって言いてぇのか?」
「ええその通りよ、そうなんでしょう?箒で何度も殴ったって」
「……ざけんなっ!!!俺が何時そんな事をした?何日、何時だ?!」
「昨日の掃除の時間よ!2人がそう言ってたわ」
「ほぉ〜じゃぁ保健の柊に聞いてみろよ?俺はその時間保健室掃除をしてたんだぜ?」
「っ!!あくまでしらばっくれる気?!そんな嘘誰が信じるのよ?えぇ?!」
「信じるも信じねぇも聞きゃわかるこったよ?それとも俺を騙そうとしていた事がバレるから聞けねぇか?」
「っ〜右子、左子貴方達からも言っておやりなさい」

が、

「…なっいない?」

彼女達は叶とモミジが言い争いをしている間にそそくさと逃げていた

「ミカ!言っとくけど俺ぁ…殴るんならコイツでやるぜ?!」

ドガッ!!!?

モミジは近くにあった公孫樹の木を素手で殴った
木は縦に僅かだったが切れ目が入っていた、彼奴は怪力だ

「…っ!?そう、そうだったわね、ゴメンなさいね」

叶はモミジを睨みながら去って行った
モミジは…

「糞っ!!…あ、ヤベ切れ目入ってらぁーうげぇ〜…ミツキ内緒な?」
「…御主…どういう手をしておるのだ?並みの女子じゃそこまで出来んぞ…」
「色々と事情が御座いましてね、俺も」

彼女はそう言いながら公孫樹を摩っていた

「殴っちまってごめんな…」

さっきまでの殺気立った彼女とは違って優しい目だった

「(……ん?)」
「あんだよ?ジロジロ見て」
「べ、別に何でもないわ」

不覚にも見惚れてしまっていた、何故だ…?