第拾捌話【検査】 


4月26日月曜日―午前10時10分…
春の陽気漂う暖かな日、庭の木々には青々と茂る緑の葉
花壇の花々も見事に咲き誇っている

二階の教室の窓辺から見える桜の木にはたわわに花が咲いていた
それはまるで雪か夏祭りの綿菓子の様…



と、まぁそんな事は置いといて、俺は今日も元気(精神的にはギリギリだが)に篠村の授業を受けていた
科目は国語、今日は現代文の授業だ

…と言う訳ですね。皆さんノートはちゃんと取っていますね?」

篠村はそう言いながら黒板の文字を消してゆく
黒板には端から端までびっちりと文字が書かれていてそれはまるでレースの模様である、つまりビリジアン色が見えないのだ
彼はそんなにも黒板に書き込んでいるのに、ましてや殆どの生徒がまだノートに書き写せていないのに誰の意見も聞かずにだ

勿論、そんな事をすれば試験の時に困ってしまうのは目に見えているし、おまけに篠村自身の評価も右肩上がりになってしまう

俺が思うに篠村はおバカである、いやきっとこれは誰もが思っている事だろう
まぁ別にどうでも良いことだが(おバカなんて可愛い言い方するより普通に馬鹿って言った方が良いか)

「では…これにて授業は終わります、委員長さん挨拶をお願いします」



+++

「〜〜〜〜〜〜ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」

堪らず叫ぶ、雄叫びが辺りに響く

「それこの間も言った」

ミカが冷静にツッコむ、その顔には表情が無い

「NO〜面かっ!(能面)だってー篠村マジむかちゅくしぃ〜〜ちょこっと八つ裂きにしてやりたいよ〜〜〜〜〜〜なぁミツ〜〜〜?」
「何よそのラノベみたいな音引きは、八つ裂きよりハチの巣にした方がスカッとすんじゃない?てか轢かれて死ね!」

モミジと叶さんの会話はいつもドSの香りが漂う
まぁ口で言うだけだから良いんだけどね…(でも二人共顔は本気だからちょっと怖いなぁ…)

「…それにしても、いや…この間のアレは今更ながら意味があったのか?」

ミツが不意に問い掛けてきた、俺は緩んだ眉根をきゅっと寄せこう答えた

「あの検査だろ?あるに決まってんじゃん、もしミツに何か起こってからじゃ…」
「モミジはミツキの事が心配だったんだね、良いトコあるじゃない?」

ショウがそう言うと彼の隣に胡坐をかいているミツが少し照れ臭そうに頬を掻く

しかし「心配って言うか〜ネタでしょ?」とミカの台詞がその青春空気をブチ壊した
まぁ、あながち間違ってはいないが、俺も悪魔ではない、ネタにする時は匿名で書く
ってそういう問題では無いな

「叶御主な〜…モミジネタにはせんよな?」
「する訳ないじゃん?だってミツは俺の大事な友達だもん」

そう言って俺は満面の笑みを彼に見せた、ミツはそれを知ってか知らずか更に照れた様に今度は上唇を人差し指を軽く曲げて押さえた
本当に火群魅月と言う男は単純である(笑)
ま、当然ながら口には出せないが…

「でもさぁ〜モミジも態度デカくなったわよね〜?確かに私とモミジは親友だけど、まさか医療車レンタルしちゃうなんて」

医療車とは、ミカの家、アチーブ叶貿易財団グループの所有している叶家専用の献血から手術までありとあらゆる医療行為が行える
凄い車の事である
その大きさは見た目は普通の献血検診車の様だがスイッチ一つで車体の大きさが二倍近くに伸びるさながら移動式の葬儀場の様である
その医療車の一台の値段は戦闘ヘリとほとんど変わらない、何しろその医療車は設備の良さもさる事ながら車体の外壁が全面防弾になっていて
その窓は高級全面防弾ガラスを使用しており医療車と言うかシェルターと言う方がしっくり来る造りになっているのだ

「だってミカなら絶対タダで貸してくれるもん!俺貧乏だもの!」
「誇るな!ま、私でも医療車レンタルするのは経済的に厳しいものね〜」
「ぇ?じゃぁ誰が出してくれたのさ?」
「たまたま修理中だったのよ、ほら車のタイヤ一つだけ違ったでしょ?」
「…そう言えばそうだったな、まぁ何にせよ助かったよ俺ダチ傷付けんの嫌だからさ…」



+++

二日前―24日、新龍神社の境内にある真田(愛染宅)家

今日の天気は昨日と違って少し薄曇りだった、気温も低く少し風もある

今日は土曜日だがいつもみたいにアニメを見る余裕は無かった、と言っても録画はしているが…(PCで)
俺はいつもと同じ時間に起床しミツとショウが寝ているミツの部屋にこっそりと忍び込んだ、時刻は七時くらい
部屋内は薄暗く灰色のカーテンの隙間から零れる光を頼りに彼等の眠っている布団にそぉっと四つん這いで向かった

二人共まだ夢の中ですぅすぅと整った寝息を立てている、暫くすると目も冴えて二人の位置もハッキリと認識できた
ショウは普段の性格からも伺える様にやはりきっちりとしていて布団が殆ど乱れていなかった、それに対してミツは掛布団は半分ズレているわ
敷布団から足は出てるわと言うか彼自身が90度回転しているわで全くだらしない

俺は小さく溜息を吐いた、しかし、普段起きている彼らしか見た事がなかったので何だか新鮮な気分になった
何と言うか襲いたく…じゃなくて寝起きドッキリを仕掛けたくなる(笑)
俺はニヤニヤとしながら二人の寝ている布団の間にいそいそと割って入った、彼等は六畳の部屋に横二列にほぼ隙間なく布団を並べて寝ている
腐女子の俺にはその布団の位置や寝相なんかが凄く萌えだった(おまけに二人は同い年の同級生で男子だし〜)

俺は右に寝ているミツの左足首と左に寝ているショウの右腕を同時にグッと掴んで振り上げ一気に手を離した
瞬間、彼等の足と手は宙に浮きドサリと布団の上に落下した、ミツに至っては敷布団から足が思いっきりハミ出ていた為に踵が直に畳に
直撃した、その音は軽くドンと部屋内に響いた
勿論彼等はその衝撃で目を覚ました
彼等は何事かと同時に布団から上体を起こして飛び起きた

「…??何なに??」
「一体何だよ…?」

「チャラララッラララ〜♪ドッキリ大・成・功〜〜〜〜〜wGood morning!やぁやぁオハヨウミっちゃんショウちゃん♪目覚めはいかがかな〜」

儂は普段自分の部屋では見る事のないモミジのイヤ〜なニヤケ顔を目覚めの一番で見てしまった
気分は最悪だ(しかも儂等の蒲団の間に寝てるし)

「……ぇ?モ、ミジ?何でここに?つーかパジャマだし…///」
「そっ///…うだそうだ何故御主が儂の部屋にしかも寝間着姿で寝てるんだっ!?」
「そこ重要なの?まぁ〜何となく寝込みドッキリ?ってヤツ?」
「寝起きだろうが!…ふぁ〜つかもう朝なのか?」

部屋は先程よりもほんの少しだが明るくなっていた、目がこの暗さに慣れたせいもあるだろうが
俺は立ち上がりベランダの方に向かいくすんだグレーのカーテンをシャッと勢い良く開け放った
空は相変わらずの鈍色(にびいろ)だったが確かにさっきよりは明るくなっていた

「嫌な天気だな…悪い事が起きなければ良いけど」

ぼそりとモミジが呟いた、儂は窓の方に首を向けた
天気は昨日とは打って変わっての曇り空、

「本当…ヤな天気だな……」

儂は布団から立ち上がり出入り口の襖に手を掛けた「少し早いけど起きるか?顔洗ってくるわ」
ミツはそう爽やかに言い残し階段を下りていった

「…さて僕も起きようかな、今何時くらい?それにしても嫌な天気だね〜」
「七時少し過ぎじゃね?…仄暗い朝は不吉の日、鉛の空は嫌われ者」
「?…何それ?変な詩」

ショウも起き上がり下へ降りていった、俺は小さく微笑した

「曇りって雨のより嫌われてるんだよ」



+++

時刻は九時半過ぎ―庭

「…な、何じゃこりゃぁーーー!!」
「太〇にほえろかっ!…これはアチーブ叶貿易財団グループの所有する医療車だ、見た目はただの献血カーだけど中は何と最新の医療機材を
積んであり簡単な手術ならこの医療車で出来てしまうんだぜ!凄ぇだろ?」

愛染宅の庭は広い、その広い庭に突如として現れた白い救急車
モミジは自慢げに彼等にこの医療車の説明をしていた

「……〜て言うかさーこの車私の家のなんだけど?説明するの私だし、つーかヤム〇ャか」
「まぁまぁま〜とりあえず説明は済んだ、早速施行しようや」
「だから人の台詞取るなっつーの…ふぅ、火群くん今から貴方の体内を調べるわ、とりあえずこの医療車の中に入って頂戴」

ミカはテキパキと彼を医療車に乗せた、ミツは何が何だか分からないと言った顔でミカを見ていた
その間俺とショウは医療車の前で立っていた、隣のショウも状況が分からないと言う顔で呆然としていた

「ねぇ…ミツキは一体何を調べられるの?」
「HIVの検査だよ?昨日の件(くだん)忘れた訳じゃないだろ?て言うか〜本題?」
「あっ…それなら僕も………あ、いやイヤ…///何でもないよ」
「だぁほ〜オメェのは別場所ですんだよ?それとも愛しのミツキくんと一緒の方が良い?」

俺はほくそ笑んでショウの腕を掴んで家の中に入った
二階へ続く階段の踊り場でショウが立ち止まる、彼はまだ呆然とした顔でいた

「べ、別に一緒でも構わないと思うけど…?設備とかは良いの?看護士さんは?」
「すでにスタンばって貰ってるよ〜それにアイツと一緒だとミカにバレちまうぜ?良いの?(笑)」
「…ど、如何言う意味だよ?」
「女ってないくらオタクでも好きな男がガチホモなのは嫌なんだって〜不思議だろ?普段二次元じゃソレで萌えてんのに」
「…?あの〜今の話濃い過ぎて良く分からないんですけど…、叶さんってオタクなの?」
「知らなかったの?俺もミカもそうよ〜?ミカなんかイラストコンテストで上位十位に入った事あるんだぜ?めちゃ絵上手いよ〜」
「知りたくなかった…いや思い出してみれば時々萌えとか言ってたような………ん?」
「す〜き〜な〜お〜と〜こ〜がどうたらこうたら〜〜?脱線してるけど俺が言いたいのはそっちよぉ〜んww?」
「………っ////////!!!!!!!????どっどどどどどどどっ」
「ジ〇ジョかよっ!まぁ〜その反応はボンもその気がおうたってことかいな〜?ん〜?トマト色やで?頬(笑)」

俺は調子に乗って何故か関西弁で喋ってみる
ショウは顔を真っ赤にして困惑の表情を浮かべていた

「若いなぁ〜旦那ぁ〜?…ん?なしてブルーハワイ…?」

ショウの頬は赤から青色に変化していた、そんなショウの表情変化に俺も唖然としてしまった

「…た、確かに叶さんの事は好きだよ…でも僕にはもう一人いるんだ…」

「……モミジ、僕は君の事が好きだっ!!」

「は?」俺はそのショウの発言に更にポカーンと口を開けて唖然とした
突然の大胆発言、俺はその突然の告白に身体中の力が抜けそうになった

「…は?……それって愛してるって事?」
「そ、そうだよ…///二股って思うかもしれないけど…そうなんだよっ///その…」
「…I'msorry…、今はその返事は出来ないよ、俺にも好きな人はいるから、多分…、今はまだ友達でいたいよ…だから答えは今はNOにしておくね」
「………好きな人…あぁミツキだろう…知ってるよ、君が彼の事を好きな事くらい…でも諦めないよ?モミジ、君をゴールに連れて行くのは僕だからね」

俺は今の彼の発言にはノーコメントで返した、なぜなら今の彼の台詞はまんま負け犬、負け仔犬の遠吠えにしか聞こえなかったからだ
しかし彼はそれを知ってか知らずか自信顔で僕に顔を近づけてきた

「唇を奪えば良いってものじゃないでしょ…?」
「じゃぁ身も心も僕の物にしてあげるよ?」

ちぅ

一秒も無い程の刹那なキス、それはまるで俺に宣戦布告をしたかのような…

「……もっと気持ち込めなよ?俺はガイコクジンだからそんな温いキスじゃ振り向けないよ?…本気で振り向かせたいならこれくらいかましな」

そう言って俺は壁側にいるショウの両肩をガシリと掴んだ、彼は一瞬目を丸くしてすぐさま目を細めた
俺はそんな彼の顔が気に入らなくてグイとショウの顔に自身の顔を思いっきり近づけた

「近いよ…///」

「目の前の事に気を取られて他が疎かになるなんてベタ過ぎだと思わない?」

「…ぇ?っ!!!なっ……///モ、モミジ…?」
「つまりはこう言う事」

目の前の彼は少しずつ背を丸くし俺に寄り掛かろうとしていた
俺はニヤニヤとしながら彼の耳元でこう囁いた「知ってた?世の中か弱い女の子ばかりじゃないんだよ?」と

「っ…///……ちょっこんな所で止めろよっ…はっ…///あっ…チャック開けるの…はナシで…いっ…しょっ…///」

俺はこのドサクサ紛れに彼のジーンズのチャックを素早く開けた

「し〜んぱいしなくても後で処理してやるからさ♪…それともパイプカットしちゃう?(笑)」
「っい”っ!!!!!!!!!…てめっ…あっ///」

ちなみに今俺はショウにある悪戯、もとい仕返しをしているwww

「こんなチビのガキにナニ握られてイキそうなんてイタイねぇ〜優等生の癖にそっちにも興味があるなんてちょっと幻滅〜…それとも〜コッチの方も成績優秀じゃないと嫌とか?(笑)」
「……っ/////////…ふっ…ざげんなぁー!テメェ犯してやる…もう二度と人前に出れない様にしてやるっ!!オレだって本気を出せ…





「誰が何を出すの?…んん〜?

俺はマジギレ寸前で性格が変わってしまったショウの唇にキスをした、先程の彼のとは違い数秒長い

「…君の、所為だからね!…///…あと処理は今すぐしてよ?こんな格好じゃ人前に出れない」
「…わぉ仁王勃ち(笑)ww指で我慢して、あとは検査結果が良かったらね♪…」


その時のモミジの顔は今でもよく覚えている
ほんの少し頬を赤く染めて小さな可愛らしい花のような笑顔
僕は不意にそんな彼女の笑顔にあてられたのだった   


不意に


+++
その頃医療車のミツとミカは…

「…///……HIVの検査と言うからもっと怖いものだと思ったが…そ〜大したこと無かったな」

今儂は医療車の中にある待合室(?)の様なかなり狭い部屋にあるその部屋にはあまりにも似つかわしくない大きな革の椅子に座っている
黒くてツヤツヤした質感はまるで校長室のあの椅子を思わせる
しかし何故儂がそんな校長椅子に座っているかと言うと…


「それにしても…火群くん注射が苦手だなんて小学生みたいね〜(笑)ま、そこが萌えるけどv」
「…うっ煩いぞ叶!…儂だって我慢してたんだ、でも…〜あの尖がった針を見るのは苦手だ…怖いっつーか……」

先程行われた血液検査で火血液を採取するために大人の掌ほどの注射器を彼に向けて差し出したところ
彼は中学二年の男子にも拘らず「ぎぃやぁ!!」と大きな悲鳴を上げ、挙句の果てにはその場から逃げだそうとしていたのだ
同じ中学二年のしかも女子の私でさえそれくらい平気なのに男子がこれだと本当に情けない

「これじゃぁモミジに嫌われるわよ?て言うか私も注射が苦手な男子は願い下げね〜」
「…御主も嫌なのか?」
「あったりまえでしょ?…?何〜もしかして私の事好きだった?(笑)」

私は試す様に(と言うか面白半分に)火群くんにそう聞いてみた

「………///勘違いするなっ…いやでも、男子たるもの注射ごときに怯えていてはイカンな、うむ!」

「あ〜…ウマい様に隠したつもりだろうけど…バレバレよ?」

「なっ///…な〜にがだよ?第一儂は御主みたいな高慢ちきの女には興味はないぞ!」

「…検査はもうしばらくかかるみたいね〜、そう言えば今ここには私と火群くんだけなのよね〜?」

「…………//////かっ…叶?」

「何期待してんのよ?…あの子は良いの?」そう言って私はクスリと嗤った

「…誰の事だ?」

「モミジよ?、好きなんでしょう?…もしかして二股?ふふふ…酷い男ねぇ〜?」

私がそう言うと火群くんは一瞬剣呑な表情を浮かべた
彼がクッと睨みつける、どうやら本当に二股を掛けているらしい、まぁ別に私は構わないけれど…だって私には彼ではなく他に好きな殿方がいるんだもの

「でも残念でした〜、今私には意中の男性(ヒト)がいるの」
「………ぇ?…………なっなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!??????????…え?え?ちょっと待て
…それは誰だ?何処の馬の骨だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!」

彼は今まで出した事の無いような大声で叫んだ、その様子だと本当に私の事が好きだったらしい、と言う事が確信した

「…気になるの〜?でも嬉しいわ、貴方が私を好きだなんて…、火群くん女の子にモテるでしょう?私ね、誰からも好かれるそんな男性(ヒト)が好みなの」
「…かっ…叶??///
「ふふ、火群くんほっぺが真っ赤よ?」

そう言って私は彼の座っている椅子の後ろにくるりと回りこみ彼の頭を撫でた
そして今度は椅子の右方に出て彼の膝にトンと座り込んだ、彼は意表をつかれて目を丸くし驚いた

「…?!……叶、御主一体何なんだ…?今日の御主は何時もと違って変だぞ?」
「あら?女性は秋の空の様に気分が変わる生き物よ?もしかして私がこんな事をする娘に見えなかった、とか?」

「ふふ…ゴメンなさい、私ね興味がある殿方の前だと本当の気持ちを隠せないの」

「……本当に良く分からん奴だ御主は、叶 実果子」

「だかしかし、面白い女だ…、叶、御主一体何を隠している?」
「…つまらない男(ヒト)、男なら女の遊びに最後まで付き合うのは常識でしょうに、私は何も隠してなんかいないわ」
「嘘をつくな、御主はそんなくだらない事をする奴では無いはずだ…儂は、確かに叶の事が好きだ、勿論一人の女の子して」

「だが!、だがっ…儂が好きなのはいつもの御主なんだよ!!…そんな気持ちを我慢したお前は好きじゃないんだよっ!」

「……なぁ〜んだ分かってんじゃないの?つ・ま・ん・な・い〜〜〜〜〜〜(-_-メ)」

茶番、そう言ってしまえる程短い時間、わずか5、6分の出来事だった
もしかしたら叶の発言は本当かもしれん、儂は何となくだがそれを確信した

しかし儂はこの出来事がきっかけで後々辛い思いをするとはこの時は思ってもいなかった




儂等はこのあと数種類の検査を終えようやく解放された
その頃にはとうに三時を過ぎていた



+++

『…〜〜〜〜〜〜〜〜やっと終わったぁ〜〜〜〜!!』

声を合わせて男子二人が手を天に上げ大きく伸びをした
それまで何も食べていなかったのでお腹が空いている、今彼らの腹の中では虫が大合唱をしている所であった

「お疲れ様w大分時間過ぎたけれどお昼ゴハンだよ♪今日はおにぎりを作ってみましたv沢山作ったからいっぱい食べてね☆」

検査を終え家に戻ると台所ではモミジが大量の握り飯を握ってくれていた
大きな白い皿に山の様に積まれたそれは昔の漫画かっ!と言うくらいに迫力があった(汗)

「わぁ…ホントいっぱいだねーあ、有り難うモミジいただきまーす」
「うむ、かなり腹が減っているからこれでも足りんかもしれんな」

そう言って二人は椅子にも座らず皿の上のおにぎりを掴んでは貪る様に喰らいついた
俺はテーブルの上にお茶がない事に気付き慌てて先程沸かした麦茶をマグカップに注いで二人の近くに置いた
その次の瞬間二人が一斉にゴホッと咳き込んだ、当り前だ喉が渇いているのに食べ物を食べるとそうなってしまう

「わわっお茶お茶飲んで飲んで!」俺は二人にお茶を勧めるように促した
やっと落ち着いたのかゆっくり食べだした、俺は彼等にちゃんと椅子に座って食べるように指示をした

「ゴメンゴメン、も〜お腹が空いちゃって堪んなくてさ、おにぎり美味しいよ有り難う」
「うむうむ、御主のふふふおひひひふぁふぁいほうは!(作るおにぎりは最高だ!)」
「ミツ〜口に物が入っている時に喋るなよ〜まぁとりあえずありがとうww…でもこんなに沢山作ったからもうご飯無くなっちゃった…」

「モミジ」

と、台所の外、窓の向こうからミカの声がした、俺は勝手口の戸を開けて外に出た

「ミカ、あっ今日はアリガトウwで…検査の結果はもう出たんだよな?」
「安心して二人とも陰性よ、最悪の事態は免れたわ」
「ホっ…しっかしミカ、お前ショウがモ〜ホ〜(疑惑)だったってのに眉一つ動かさないんだもんな〜なして?」
「基本じゃない?男子同士が絡んで喜ばない腐女子はいないでしょう?ネタよネタ♪ふふふコレからの二人に期待ねw」
「…まっそうだわな(同じ腐女子の俺でもちょっとショックだったてのに…タフだなぁ〜本当)じゃぁ応援しないとな?」
「それは嫌よ?やっぱり青春は乱交よ」

「……ら…、実果子さぁ〜ん何か間違ってませんか〜?」

ふふふ、とミカは笑って帰って行った
その後ろ姿は腐のオーラが漂っていた


「あ…ネタにする気だな」