第壱拾伍話 【爆発】

2月28日ー日曜日
天気は風は強いが快晴 気温は相変わらず寒い

雲がハイスピードで空を疾走していく

「……暇ぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」

日曜は基本暇である、しかもこの時期もうすぐすれば春休みである
まぁ、その前に期末試験が待ち構えているが…
そんなのブービーの俺には関係ない

「叫ぶなっ!、そんなに暇なら勉強でもしてろ、ビリッケツなのだから少しくらい成績上げぬとヤバいんじゃ?」
「…どぅぁってぇ〜…つか俺一人でヤれってか?」
「教えて欲しいなら儂の言う事を一つ聞け」
「だが断る!…つーか何で偉そうなの?何かムカピー」

コタツに入っている儂の左隣にぴったりとくっ付いているモミジが下から目線で儂を睨み付ける
儂だって暇なのだ、冗談の1つくらい言うわ

「はいはい…、それにしてもホント暇だ………はぁ…これが隣にいるのが美人でボインだったら暇しないのにのー(笑)」

ミツがゴロンと横になった
俺も極限に暇だったのでミツに倣って横になる
俺は彼とは反対側にコタツの蒲団から尻を出し頭だけを中に押し込めた
だが、そうしていてもつまらなかったのでコタツの中に潜り込みミツの股下辺りに頭を押し付けた
傍から見れば変態である

「オイ…何の真似だ…モミジ」
「蓑虫のマネ〜…暇だから襲って良いか〜?」
「…阿呆か、って何処を触っておるっ///こらそんな所を突くなぁ〜イヤァ///」

俺は調子に乗ってズボン越しにナニかをを突っついた
その反応はまるで女の子みたいで可愛らしい(萌)
コイツの属性は受けだな(笑)

「って///いい加減にしろっ!!怒るぞっ」
「えぇ〜あ、固くな…」
「言うなぁーーーー!!!///」

俺はハイハイと面倒臭いと言う様な声で適当に返事をした

「めんごーだってミツ可愛いもんww」
「…可愛いとか言うなバカァ!!」
「なぁ〜やっぱ勉強教えて?」

俺はそのままの体勢でミツの下半身を抱き込む様にぎゅっとくっ付いた
完全に抱き枕状態である
ミツは怒る気を失くしたのかハァと小さく溜息を漏らす

「分かったから儂から離れろ///…そのーそろそろ……」
「ん〜じゃぁカラダで教えてくださ〜い先・生w(笑)」
「いや…マジ限界なんですけど…(暑さとその他諸々で)」

俺は渋々ミツから離れてコタツから這い出た
ミツも起き上がってそのまま立ち上がる、そして両手を真っ直ぐに伸ばしん〜と背を反らす

「…〜…動かないのも退屈だなー、何処かに行かぬかモミジ?」
「何処かって?」
「その辺だ、こう家にいても体が鈍る、そうだ公園に行こう!久し振りに体を動かすぞ?」
「えー体動かすんならその辺に横になっても出来んじゃん?(笑)主に下半身的な所とか」
「下ネタかっ!!阿呆か…あー…やっぱり家に居よう寒い…」

彼はまた元居たコタツの中へ入る
そして背中を丸める、俺も彼に倣って元居た場所に戻る

「ってふりだしかっ!!!」
「だって寒いし〜んぉ?」

ミツがふっと窓の外を見つめた、玄関先に誰かがいるようだった

ピーンポーン、その数秒後に玄関のインターホンが鳴った
ミツが立ち上がる、眉間にしわを寄せて嫌そうな顔で玄関に向かう
俺はその様子を横目で見ていた、「この寒いのに…宅急便かな?」

「ハイデル化粧品からお届け物でーす、ここに判子かサインをお願いしまーす」

どうやらその様だった、しかし…ハイデル化粧品?そんな物を頼んだ覚えはない、化粧品なのだからミツやジイちゃんと言う事は
先ず無いだろう、では誰が?

「ほれモミジ、これ御主のであろう?しかし大きな箱だなー?」

俺は彼からその箱を受け取りお膳の上に下ろした
箱の外装にはガムテープが張ってあるだけで何もロゴが書いていない、箱の上の伝票も少しよれていた
明らかに不自然だった

「…いや、頼んだ覚えはないけど?何かの悪徳商法じゃないかな…コレ?普通、化粧品を頼んだら箱に会社名が書いてある筈だし…」
「そうなのか?って御主じゃないとすれば……?ジィさん…あぁ育毛剤か、ハゲは大変だなー(笑)」
「……あのジイちゃんが?ナイナイ、…カチッ?」

箱の中から何かが聞こえてきた、カチッカチッ、まるで時計の様な……

「っ!!!!!!???????ミっミツッ!!!ここここ……コレぇーー爆弾だよっ!!!多分…」
「まさかー火曜のサスペンスじゃあるまいしーカチッカチッ?…ぇ?ぇぇぇぇえええええええええーーーーー!!!??」

ようやく彼もこの音に気づく、俺はコタツから出てそ〜っとその大きな箱のガムテープを剥ぐ
そしてさらに慎重に箱を開ける

「…あ…爆弾でした、どうしよう…」

俺は今にも死にそうな目で彼を見つめた

「そそそ…そんな事言われて

カチカチカチカチカチ、先程より明らかに早い、ストップウォッチか!!

「えぇぇぇーーーーーーいっ!!!こんな物窓の外に投げ捨ててやるーーーー!!!!!」

俺は半狂乱で何を考えたかその箱を抱えて居間にある窓を勢い良くガラリと開け放ちその箱を空高くブン投げた

その瞬間、箱は大きな爆発音と共に大量の白煙を出した
ご近所のおば様達が何事かと窓を開ける

「…間一髪セーフ……」
「じゃねぇーよっ!!!…あぁ…本気で怖かったぞ……死ぬかと思った」
「水平装置が付いてた、けどあの爆発じゃ精々部屋が一つ吹っ飛ぶくらいだよ…そしてこの爆弾を仕掛けた犯人は恐らく緑川の家の者」
「緑川っ…御主の身内か?!まさか瑪瑙…」
「違う、メノウ姉ちゃんは機械音痴だから…そうかさっきの配達員…」

「ご名答…良く分かったなモミジ」

漆黒の長髪首の後ろで一括りに束ねた細身の長身の青年が現れた
俺はその男のいる方、左の方をぎっと睨む、見覚えのある風貌、聞き慣れた声

「…円谷紫苑っ」
「クックックッ…最近姿を眩ましたと聞いてたが、まさかこんな近所だったなんてな…瑪瑙の奴も最近妙な態度取りやがるし…お前ら釣るんで
裏切りやがったな…?!この罰はキッチリ受けて貰うぜ!!!!!!」

タッ、紫苑が俺達の方に向かって突進してくる

「っ…お前を敵には回したくなかったよ!けどな…俺だってこんな所で負ける訳にはいかねぇんだよっ!!!!!!」

俺は奴、紫苑が向かってくる方向に走った

「モミジっ!?ぶつかる…

「ダァッ!!!!」

ゴシンッ!!!、ぶつかる振りをしてアッパーカット!そして素早く上段蹴り!
ふわり、と紫苑が空を舞い堕ちる

「アガッ…、相変わらず容赦ないな、お前…まーそういう所キレーじゃねーけどなっ!」

紫苑が起き上がる、その間僅か2秒、奴は起き上がるや否か俺の右腕を掴みこちらも上段蹴り
しかしかわす、そんな平面攻撃は俺には通用しない

「残念無念!!オメーの攻撃の軌道は見え見えなんだよっ!!!!!バァーッカ」

俺は台詞を吐きながらトンッと二歩ほど後ろに下がり奴との距離をとった

「…(モミジ…中々やるな、いやしかしあの紫苑と言う男も結構な手練…)」

儂はふむと左手で顎を摩る、あの戦闘に儂の入る隙は無い

「距離を取ったか…けどこれはかわせるかっ!?」

紫苑がツナギのポケットから棒状の何かを取り出しこちらに投げる

「っ!!サイか…フンッちょろ……っ!?」

グサリ、左二の腕に刺さった、見事なクリーンヒット

「図ったなっ!!ワザと軌道を外して…」
「そうだ、俺だっていつまでも弱いままじゃ無いんだよっ!!!!次は心臓だ!外さねぇぜ!」

紫苑は俺が動けないのを良い事にもう利き手の右に残りのサイを回して構え俺の方に突進してくる!

「裏切り者がっ!!!!!!!!!!!!!死ねぇーーーーーーーー!!!!!!!!」

「モミジィィィィィィィィーーーーーーーーーーーっっっっ!!!」

ガシィィィン……、俺はもう一本のサイが向かってくる瞬間に己の左腕に刺さっていたサイを抜き取り
そのサイの又の部分で奴のサイを受け止めたのだ

ビュゴッ、勢い良くサイを抜いた為か二の腕からは大量の鮮血が溢れ出した
しかし不思議と痛みは感じなかった、それ所か逆に血が騒ぎだしてくる

「チッ、かわしたか…だがその出血じゃそう長くは持たな………

「あー?何か言ったか?蚊の啼く様な声じゃ俺の耳には聞こえないぜぇ?」

紫苑が前屈みに倒れこむ、モミジが攻撃をしたのか…?
彼女が立ち上がる、負傷しているのにも拘らずその目は先程より大きく見開かれていた
だがしかし少し様子がおかしい…

「…ってめ…
「とどめだ」

スッ、モミジがサイを振り上げる、狙いは紫苑の脳天だ
あのままでは殺されてしまう

「さようなら」

バシィィン、金属を弾く様な音
間一髪、儂は彼女の構えていたサイを足で弾いたのだ、サイはクルクルと数回空を舞いコロンと庭木のある方に転がって行った

バシッ!!

「止めろっ!!」

儂はモミジの頬を手の甲で引っ叩く
次の瞬間、彼女はバタリと地べたに倒れ込んだ

「…モミジ……っ!?しっかりしろ!!おいっ!モミ……
「大丈夫、気を失ってるだけだ…早く病院に連れて行け…」
「えぇ………、紫苑さんっ!!貴方の方こそ…」

紫苑は腹から血を流していた、恐らく先程モミジが刺したのだろう…

「俺は平気だ…良いから早………

バタリ、紫苑が倒れた
その顔色は青い、どのくらいの深さで刺されたのかは分からないが出血量からしてかなり深く刺されたのだろう

「…どうしよう……こんな時に限ってジイさんは出掛けてるし…」

「何事っ?!」

背後から聞き覚えのある女の声が聞こえた、儂は恐る恐る振り向く
何とそこに居たのは…

「あ…瑪瑙………」

彼女は愕然とした表情で駆け寄って来た、黒曜の瞳が揺れている
瑪瑙はそこに倒れ伏せているモミジを抱き寄せる

「これは…そ―
「早く救急車呼びなさいよっバカっ!!!」
「はっ…はいっ!!」

漆黒の髪が逆立っている、儂は言われるままに居間に戻り廊下にある黒電話を目指す
息が荒くなっていくのを感じる、儂は涙を堪えて一目散に走る

「っ!!怪我人がいますっ早く救急車を!!!…」必死に叫んだ、叫んだ衝撃で喉が痛くなる
早く、頼むから早く…!!!



暫くして救急車が到着した、救急隊員がその惨状に唖然としていた、当然だろう
妖の儂ですらこの惨劇は震えが起きる

「…ギリギリセーフね、で…何があったのよ?モミジと紫苑が血を流して倒れてるは…、所で…如何して紫苑が此処に居るのよ?」

瑪瑙の質問攻撃、しかし今の儂にはその問いに答える余裕は無かった
ただ、震える事しか…

「ちょっかいを出してきたってトコかしら…?それにしても酷いわね…まぁあの人が飛び道具を使うのは何時もの事だけど…もしかしてモミジが
彼を…?」

瑪瑙の発言に思わず肩がビクリと上下する

「…そう、なのね。前にも同じ様な事があったのよね…私があの子に稽古をつけてあげていてね、私の竹刀があの子の鳩尾に直撃して倒れてね、
私慌てて近寄ったらいきなり胸倉を掴んできたの…その時の目は鋭くてとても冷たい色をしていたわ…まるで獣みたいにね
これは確証じゃ無いけれどあの子…自分の身がピンチに陥るとあんな風になるんじゃないかしら…?」

先程と似ている…しかし、それは誰でもそうなんじゃないだろうか?と、儂は思う
確かにあの目付きは獣そのものだったが…

「果たしてそうだろうか?…確かにモミジは頭に血が上ると目付きが変わる癖があるようだが、獣ではない!」
「…ふふ、そう、ね…あぁそうだわ病院に行かなくて良いのかしら?」

儂はハッとした、そうだ、こんな所で話している場合ではない!早くジイさんにこの事を伝えて病院に行かなくてはならない

「すまぬな…今連……あ、ジイさん携帯持って無かった…どうしよう……」
「あらら、しょうが無いわね、じゃぁ私がそのおじいさんが帰って来るまで居てあげるわ、だからアンタは早くモミジの所に行ってあげなさい」

「行け」と言う様に黒曜の瞳が鋭く光る、儂は返事をせずにコクリと首を下げて走り出した
玄関の横に立て掛けてある銀色の自転車のチェーンを外すと急いで跨りペダルを漕いだ、勿論向かう先は病院だ


「(とは言え…彼奴が何処に居るか、まぁ受付で聞けば良いか…しかし大丈夫であろうか…?)」

二の腕を刺されただけだ、命に別状がある訳では無い、だがしかしそれでも心配だった
儂が妖界にいた頃は戦闘なんて日常茶飯事だった、だけど此処は人界、血が流れるようなことが起こるのは異常である

「(モミジ……)」


+++

「もう大丈夫ですよ」

俺は病院にいた、先程目が覚めて目の前に見慣れぬ白い天井が見えてビックリした
薬品の臭いが鼻に付いて取れない

「…あの俺、何で病院に…?」
「貴女腕を刺されてるのよ?ここに来た時は気を失っていたけれど…」

腕を刺された、その事は覚えている
問題はその後、全く覚えていない…一体いつの間に気絶したんだ俺?

「あ、紫苑は?…長髪の青年居なかった?」

俺はハッとして看護士さんに尋ねた、って知る訳ないか…

「シオン…?あぁ貴女と一緒に運ばれて来た男の子ね?その子ならホラ」

看護士さんは右側を指差した、そこにはベッドに横たわる紫苑の姿があった
上半身は服を脱がされていて腹に包帯が巻かれていた

「……ぇ?紫苑っ!!!何でっ紫苑は怪我してないのにっ?」

俺は慌てて彼の元に歩み寄る、情けないが動揺していた
彼、紫苑は俺が覚えている限りでは怪我はしていなかった…筈なのに?

「モミジっ!!!」

治療室に響き渡る少年の声、ミツだ
彼は俺を見つけると「モミジ」ともう一度俺の名前を呼んだ
その額には大粒の汗が見えた

「よ…良かった、大丈夫みたいだな……っはぁはぁ…あ、彼奴も無事の様だな…一先ず安心した…」
「心配掛けてすまねぇ…けど何で紫苑が怪我してんだ?」
「覚え…あ、いや…無事で何よりだ!うむ…」

言えはしない、御主がやったんだとは
儂はグッと口を結んだ

「…るせ…な……」

下の方から声がする、紫苑が目覚めた様だ

「紫苑っ!!!!!!」俺は叫ぶ様に彼の名を呼び駆け寄りガバリと抱き付いた

「…紫苑……っにーちゃんっ…」
「モミジ?何だよいきなり…心配ねーよ、俺は平気だ」

「………?!おいモミジ…何をやって、いる…?」
「おぉさっきのガキ、心配掛けて悪かったなハハ」

軽快な喋り、先程の尖った態度とはまるで違う、何処にでもいる普通の青年だった
儂は彼を剣呑な目で見やる、いくらモミジが抱き付いているとは言えここで警戒を解く訳には行かない
もしもと言う事も有り得るからだ

「な…なぁどうして紫苑は怪我したんだ?…俺途中までしか覚えてなくてさ……」

モミジに眉根を寄せて儂を見つめてきた、先程も同じ事を訪ねてきた、が、やはり言えない

「…まーたか、覚えてないのか?」

と思いきやその質問に答えようとする青年がモミジの顔を下から覗き込んでいた
儂は慌てて紫苑に「それは言うな!」と合図を送ろうとしたが手遅れで彼は先程の事を淡々と全て話してしまったのだ
その時の彼女の顔は今にも死にそうな表情になっていた、「嗚呼何て事…」儂はその場で目を瞑る

「……暴走したのか、俺………」
「あぁそうだ、お前は頭に血が上ると周りが見えなくなる、まるで化物の様にな」

化物、確かにあの目付きは獲物を狙う様な眼をしていた…しかしその原因を作ったのは彼、紫苑だ
彼がモミジを窮地に追い込ませなければあの様な惨劇は起きる事は無かった筈だ

「化物なんて言わないで下さいっ!!!」
「…何だよガキ?俺がモミジに何て言おうが勝手…
「非情だっ貴方達は彼女に非情すぎるっ!!!!!…モミジは化け物なんかではない…モミジは普通の女の子だ!だから…」
「わーったよ…チッ、ガキに叱られるなんて俺もまだまだって訳かよー、あぁでー、モミジさっきは聞きそびれたけどお前はマキエのバァさん
を裏切ったんだよな?理由は何だ?」

その質問にモミジは今まで下に向けていた首を上げた、その目は一点の曇りもない

「ババァが大っ嫌いだからだっ!!!それ以外に理由はねぇ!!!!!!!」
「……そっかそーかそぉーか…ハハハハハハハハっこりゃ面白いわ、大嫌いか、俺も嫌いだぜあのババーは大体仕来りとか古臭ぇんだよなー」

「じゃぁ貴方も裏切りなさいよ?紫苑」

突然背後から瑪瑙の声が聞こえてきた、彼女は手に果物の入ったバスケットを提げていた

「瑪瑙っ///!!!なっ何でお前が此処に?」
「いちゃ悪い?折角貴方の好きな果物を持ってきてあげたのに…残念、本当貴方には失望よ紫苑」

氷、と言うに相応しい瑪瑙の台詞、その顔はまるで雪女だ
片や紫苑は瑪瑙に言われたのがショックだったのか白目を向いてピクピクと硬直していた

「…メ……メノウ姉ちゃん?!が如何して」
「あら、さっきまで気を失っていたのに随分と元気そうね?フフ良かったわ、はいモミジの好きなリンゴとバナナも入ってるわよ」

紫苑の時とは別人の表情でモミジに接する、クールビューティー…いやブリザードである

「あそう言えば瑪瑙…
「あのあとお爺さんすぐ帰って来たわ」
「そうか、有難うな瑪瑙」
「んんへはんふぇへほーへいはんふぁふぃふほ?」

モミジが口にバナナを刺して何かを言っていた、当然分かる筈も無い
が、

「如何して居るかって?それはモミジに届け物をするためよ?」
「何で分かるのーっ?!」

思わずツッコむ

「届け物?何だよ」

しかもスルー、スベったみたいではないか!

「ほら、これコートよ、モミジ持ってないって言ってじゃない?この間宗家に行った時にこっそりお蔵に侵入したの、その時に見つけてね〜
サイズもピッタリだと思うけど?まぁ色は茶色だけれど…大丈夫でしょう?」

焦げ茶色のダッフルコート、洗っていないので少々カビ臭かったが何処もほつれていなく綺麗だった

「うん…でも宗家って事は……誰が着てたんだろう?型が古いから最近のじゃないよね」
「内側にゆかりって書いてあったから…貴女のお母さんのね」
「母さんのっ!?…そう、ありがとうメノウ姉ちゃん、これ大事にするよ」

俺はそのコートをメノウ姉ちゃんから受け取った、確かに内側に母さんのネームが刺繍してあった

「…良いのかよそんなモノあげて?見つかったらタダじゃ済まねえぜ」
「あら生き返ったわ、良いのよあの人の物はこの子の物でしょう?親子なんだもの、それに私は裏切り者よ、既に泥に足を突っ込んでるのよ?」
「…見つかれば制裁受けるぞ?下手すりゃ殺されるかも知れないんだぞ…」
「いつでも覚悟は出来ているわ、それにこれは緑川に生まれ堕ちた罰よ…まぁでも制裁を受けるのは私だけじゃ無いわ」
「俺もだろ?メノウ姉ちゃん…だけど俺は負けないぜ!」
「紫苑もよ?今私達とじゃれている時点で裏切ったと同じ…そう、私達はゼウスの元から堕ちた堕天使…」

「…仕方ねーって訳か……たくっ瑪瑙お前は相変わらず怖いなー」
「どうも、それと…私行く所無いから暫く貴方の家に厄介になるわね紫苑?」

「…ぇ?」

紫苑の目が点になった