第拾肆話 【災難】



ミカは俯き首を下に向ける、高飛車で高慢な彼女がそんな顔をするのは滅多にない

「…いや、叶の所為では ない…力不足な儂が
「でもっ!…体震えてるじゃない、顔色だって血の気無いし…」

彼の顔色は少々青い、まるで貧血になった様な感じである

「ん〜…本人がそう言ってるんだし大丈夫だよ、多分 ね?ミツキ」

ショウはニコリと床に座ったままのミツに話し掛ける

「でっ…
「たーくっ男の癖に体力ねぇな〜運動不足なんじゃね?」

半シリアスな雰囲気の中その空気をブチ破ったのはモミジだった
僕はミツキに向けた視線を右側に居るモミジに向けた

「…ほっとけ」

ミツキも彼女の方を見る、そしてゆっくりではあるが立ち上がる
だが、やはり僅かだが体が震えていた、気力だ

「火群君…わっ、私も貴方の仲間になったのよね…?」
「うむ、そうだぞ♪これから宜しくな叶!」

そう言って右手をミカに差し出す、ミカも釣られて手を伸ばす

「…うんっ!」

ワンオクターブ高い彼女の声が部屋に響く、その顔は満面の笑みだった
如何やらミカはミツに惚れているのだろう…


「………、さっ丁度12時になった所だし昼飯にするぞ〜!ミツーショーお前等も手伝えよ?」

クルリと廊下の方へ向き軽やかにスキップをして階段を器用に駆け降りる
今日は何だか気分が良い

「雨なのに元気だね〜ま、あれがモミジだもんね、僕等も行こ?」
「…しょっと、そーだな…あーー腹減ったぁ〜眠っ」
「…あっ待ってよモミジ!私も手伝うっ」

バタバタと叶も階段を駆け降りる、途中踊り場の壁にぶつかり「ぐぴゃ」とまるで蛙が潰れたような声を上げていた


「モーミジ♪ねぇねぇ私にも手伝わせてよ〜」

ミカが台所の戸からヒョコリと顔を覗かせた

「ミカ……えっ!はぁーいっいい!気持ちだけで良いから、ミカは居間で座ってて、な〜?」
「え〜如何してよ?折角来たんだから良いじゃない?それに私あの頃より料理の腕が上達したんだから安心しなさい!」

ゴメン…正直凄〜く不安です(汗)

あの頃、今から遡る事4年前…当時9歳の頃の話だ、あの日は夏休みの1日目だった
俺は朝早くから宿題片手にミカの屋敷に遊びに来ていた、小学校の宿題は中学の宿題に比べて簡単で、量も少ないので1日で終わらせて
しまおうと言う訳でその日は張り切っていたのだ

「あ〜終わんねー!ミカぁ〜お前あとどのくら〜い?」
「ん〜えとね…あと3ページかな〜モミジは?」
「うげぇ〜何でそんなに早いのさー俺なんてまだあと10ページも残ってるぜーあーーミカって本当にそう言うの早いよな〜うらやま〜」

俺は残りの夏休みの友のページをパラペラと捲りブツクサと文句を言っていた
あまり成績が良くなかった所為かこう言う宿題などと言うものが苦手だった、嫌いな理由は単純「面倒臭いから」である
そう俺は昔から怠惰な性格だったのである…今思えばもっとちゃんと真面目に勉強していれば良かったと思う事もよくある
まぁ、今となっては時遅しであるが…しかし、それも良い思い出と思って諦めている

「まぁねv私宿題だけは早い方だから、でもまだ読書感想文とえーと…人権ポスターが終わってないから」
「でもあとそれだけだもんな〜お〜し!俺も早く終わらせてポスターかくぞ〜!!でもその前にーハーラーヘーター!」
「私も空いたわ、じゃぁそろそろお昼にしましょうか?今日は婆やもメイド達もいないから私が作ってあげるねv」
「ミカ料理できるの?」
「まぁねwだって女の子だものトーゼンよ、もちろんモミジも手伝ってね?」

今思えばそれが悪夢(ナイトメア)の始まりだったのだ…

「出〜来たwあとはお皿に盛りつけるだけね」
「チャーハンだ〜☆ミカんちの冷蔵庫って高いものばかりだからきっと美味しいねv」

まだ無邪気だったあの頃

この数分後にはガラリと性格が変わってしまうなんてその時は夢にも思わなかった

いや、今ではそれで良かったんだと思っているが…(汗)

「いっただきまぁ〜す♪」

皿に盛られた炒飯を起用にスプーンで掬う(すくう)
炒飯の色は少し茶色の醤油味でピーマンと人参と葱が入っている極々普通の炒飯だった
見た目は………

ぱっくり、炒飯をひとくち食べる

舌に違和感感じる
次の瞬間口全体に苦味の様な辛みの様な渋みの様な何とも例え辛い味が広がる
あまりの異常さに思わず口を押さえてそっと手の中に吐き出した、しかし炒飯はこれと言って異常は見られないただの炒飯である

「如何したのモミジ?口を押さえて気分でも悪いの?」

心配そうに俺を見つめるミカ
彼女はまだ自分の作った炒飯を食べていない

「いや…何で…―

もごぉぉぉぉっ!!!っ…おぅぇっ…!!」

口から出したにも拘らずその異常な味が口所か喉にまで広がっていくのである
恐らく唾液を通じてだろう、俺はあまりの異常事態に気分が悪くなり隣室の厨房へと駆け込んだ
トイレへ行く余裕が無かったのだ

「(なっ…これってもしかしなくてもミカの作ったチャーハンのせいだよな?!)」

空腹で空っぽの胃から大量の胃液が出る、それも半端ない…
俺はこの時本当に死ぬかと思った、いや、死んでも可笑しくなかったのだ……


「…モミジ大丈夫?」

背後から心配そうにミカが声を掛けてきた
眉を八の字にしてオロオロとしていた、当然だろう親友がそんな状態になったんだから
だがしかしそれが引き金だろう、俺は彼女のその言葉でプチっと切れてしまった

「…………大丈夫だぁー?無事な訳ねぇだろーが!!!お前が作ったチャーハンのせいで気分が悪くなったんだよ!!!この味オンチ!!」

「…モミジ…?私が作ったチャーハンのせい?…そんなだって私ちゃんと…」

泣かせてしまった、が、しかし今はそんな事どうでも良かった

「大体…一体何を入れたんだよ?見た目しょうゆ味なのに苦いし辛いし…」
「え…しょうゆなんて入れてないわよ?私が入れたのは「ワイン」と「茶色いおさとう」、あと「ラー油」よ」

……………

固まった、俺の顔は引き攣ったままフリーズしてしまっていた

「ワ…ワイン?砂糖にラー油って……ふっ…

ふざけるなぁぁぁぁーーーー!!!!!おまっ…チャーハンつーかそんな調味料の組み合わせ聞いた事ないわっ!!やっぱ味オンチだミカはっ!」
「だ…だって…あまい方がおいしいんじゃないかって思ったから…それに中華料理にはラー油よね?」

完全にミカに対する接し方が変わった
コイツには絶対料理をさせてはいけないと

こんな異常な程の味音痴には…


「だ、だって…お前スーパーが付くほど味音痴じゃん…?」
「そんな事ないわよ〜昔はあまり上手じゃなかったからちょっとマズかったかもしれないけどぉ…今は大丈夫だもん本当」
「いいって、今日はミカ、客なんだしさー俺がご、ご馳走するよ…★御持て成しオモテナシ♪」

必至に必死だ、13歳で死ぬのは嫌だ
額どころか全身に滝の様な冷や汗が流れ出る、4年前の悪夢が蘇える…当時の舌の感覚や胃液が喉のを通る感じ、全てが思い出されて
眩暈がしそうになる

「ちぇ〜今は昔と違ってちゃんと味見してるもん!モミジのケチ子さんっ」
「あはは…何とでも(何言われたってお前を台所に立たせる訳にはいかねぇんだよ…つーかあんなの喰ったらミツ達ぜってぇ死ぬ)」


「モミジ〜手伝うけど何すればいいんだ〜?」

暫くしてミツとショウが下りて来た、来るのが少し遅かったのできっと気を使ってくれたのだろう、紳士だな(笑)

「おぉ〜ぅ♪…そ〜さねぇん?体はエエのかい?…まぁ良いか、ミツ〜冷蔵庫に何が入ってるか見て」

俺は先程の悪夢を噛み潰し笑顔で彼等に対応する、とりあえず忘れよう、キレイさっぱり忘却の彼方に捨ててしまおう!
俺はどちらかと言えばポジティブ思考な方だった

「…えと、のぉー…卵とハムかな…後は漬物だな…うわぁ何もねーな」
「野菜室は?」
「ん〜…あ、玉葱と人参とじゃが芋だなーカレーの残りだ、この材料で4人分だろ?何を作るんだ」
「足りるの?足りなかったら買い出し行こうか?ちょっとだけ雨足弱くなったし…この近所って商店街あるよね?」

確かに足りない、いやギリだろうか
だがしかし雨足が弱くなったとは言えいつまたさっきの様な豪雨になるか分かったもんじゃない

「良いよ、大丈夫ダイジョーブ♪ギリでも足りれば良いし、それにジィちゃん帰りに買い物してくるって言ってたし…問題はその材料で
何作ろうか〜…」
「炒飯は?ご飯ある?」

炒飯?…その単語は悪夢の単語
キレイさっぱり忘却の彼方に捨てたモノが手元に戻ってきた…再び冷や汗を掻く

「あぁそれなら作れそうだなーおーいモミジそれで良いか?」

ミツの声が遠くに聞こえる…駄目だ駄目だcomeback!!意識を戻せ俺!
必死に堪え、持ち直す

「あ…う〜となぁー…(ヤベ他のって何がある…?)あっ!雨降ってちょっと寒くねぇ?確かチーズも無かった?ポケットにあったよな?
今日のランチはリゾットにしようよ?俺得意だし☆」
「そう言えばあったような〜…と言うか御主何だか必死に見えるが如何した?」
「叶さんと喧嘩?」

2人が心配そうに俺を見ている、喧嘩ではないが…

「ナンデモナイヨ♪(ぎごちない様な感じで)」
『(…明らかに何かあったな)』

俺は面倒事は避けたかったのでそそくさと調理に取り掛かる
手順はお手の物、テキパキと進める

「ねぇ、絶対何かあったよね?」
「だな、絶対何かあったな」


+++

「んも〜野菜切るくらいなら私だって出来るのに…て言うか木村君だってお客じゃない?」

俺とミツ達が作ったリゾットを口に頬張りながらミカがぶつくさと文句を垂れる
目は俺をジッと睨み据えていた、だがしかし俺はそれを全く気にしない

「アレは良いんだよー言うなれば客と書いてペットだから♪飼ってるから☆」
「ペットね〜良い趣味してるじゃない?(笑)」
「誰がペットだよ!て言うか2人とも顔がニヤけてるよ…」
「そうだぞ、ショウはペットと言うより捨て犬だ!段ボールに入って震えているヤツだ!」

『良い趣味してますなぁ〜w(萌)』
「君達ねぇ…(怒)ミツキも酷いよー捨て犬って、せめて飼い犬にしてよ」
「そう言う問題か?」
「なぁなぁこの会話ネタにしていいかな〜?つーか彼奴等で本出したい!」
「右に同じく。R指定希望で☆パラレル有りも良いんじゃない?」
「大賛成♪…つーか俺等13歳なのにこんな会話してて良いのか…?今更疑問に思うんだけど…」
「……。なぁコレって何の会話なんだ?今更だけど…」
「さぁ〜あ、そう言えば今日ってアレだよな?ミカは持ってきた?」

そ言うって俺は席を立った、今日は2月14日だ

「…あぁーそう言えば忘れてたけど持って来たわよ」
「どっちだよビシッ→、んじゃ〜俺はあっちに置いてるから取りに行って来るな〜♪」

俺はそそくさと台所へ向かう、2月14日は義理でも何かあげておけばとりあえず良いみたいな日だ
まぁ社交辞令的な感じだな、全く日本は面倒臭い、外国は男性が女性に貢ぐ日だというのに…

「…何だろう?」←ショウ
「今日は2月14日、期待してて良かったぁ〜!(ガッツポーズ)」←ミツキ
「あぁバレンタインデーか…義理でも何でも嬉しいや」←ショウ

「お待たせさんw可哀想な2人にhappyValentine〜v」←モミジ
「ガクっ!可哀想は余計だ御主」
「そうよ〜それを言うなら哀れなブタ野郎くらいにしておかないと」
「そっちの方が酷ぇよ!!つーかミカ前にも増してボケ度上がってねぇ?俺あんまツッコめねぇよ?」
「…漫才は良いから」←ショウ
「あ、ご免なさい…。あんまりにも気配がしなかったから忘れる所だったわ」
「天然で腹黒ぉ〜…あ、これコイツの性格だから気にしないでネw」

計画的なのか天然なのか、とりあえず叶が腹黒いという事が分かった…

「はいv」

ニコリとはにかんだ顔が可愛らしい、叶は薄いピンクの包みを儂等にくれた
キャンディの様な形にラッピングされていて両端はオレンジ色のリボンで結ばれていて小さなメッセージカードが貼ってあった
『Happyvalentine★』と濃いピンクのペンでこれまた可愛らしい丸い文字で書かれていた、義理でも嬉しい

「…ありがとう///」
「わぁ〜可愛いねv開けても良いかな?」
「えぇ、食べてみて」

そう言ってまたニコリと笑う、いつもモミジの活発な笑顔は見ているがやはり時々は普通の女子の柔らかい笑顔も良いものだ
カメラがあれば収めたいところだ(笑)永久保存v永久保存v←お前はオッサンか

「…鼻の下伸ばしてぇ〜ラクダかよっ、モミジちゃん妬いちゃ〜ぅ(笑)」
「モミジ普通に引くから、て言うかドン引き?」
「…うぅぅ、あ、……そう言えばそのチョコってラッピングは自分でしたっぽいけど…中は買ったヤツだよな…?」

俺は恐る恐るミカに訊ねた、前回の前科のある彼女だ
一応聞いておいた方が良い

「いただきまぁ〜すw」

ショウがチョコ(まるいからトリュフだろう)を一つ手に取り口に入れる
俺は彼に気付かれない様に口元を凝視していた、もしここで泡を吹けばもう一人は救済できる…筈だった

「ガァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!?????(バタリと卒倒)」

ミツが倒れた、片やショウは…

ドサリ …、言うまでもなくKO(ノックアウト)、見事な地獄絵図に拍手を送りたくなる所だ

「あれぇ?…はっもしかしてまださっきの疲れが残ってたのかしら…」
「…はぁぁぁぁ…なんちゅう前向き思考、……お前まさかまさかとは思うけど………手作りとか言うんじゃないだろうな…」

予想はしていた、いやこれを想定外だと考える奴は彼女の親友ではない
俺はまた恐る恐るミカの目をジッと見据えて「手作りか?」ともう一度訊ねた

「え…そうだけど?まさか…私間違えて毒的な物でも入れちゃったのかしら…?」
「なにサラリと恐ろしいこと言ってんだ!大当たりだろうけど…ちなみに〜聞くけど、何入れた…?」

俺は腕を組んで2人の死骸を哀れな目で見やる、彼等はピクリとも動かない

「お〜い2人共生きてる〜?…返事が無いただの屍のようだ(某ゲーム風)」
「…入れたのって確か…、チョコと片栗粉と…あと唐辛子だっけあ、そうそう体に良いから黒酢とかも入れたような〜でもそのくらいよ?」

顔が青ざめていくのが自分でも分かる、て言うかこの状況を見た瞬時に血の気が引いた

「あ、心配しないでちゃんとモミジの分もあるからwでも…どうしよう2人共死んだみたいに動かなくなっちゃた…」

嗚呼、神様仏様お2人様、こんな超ド級の味音痴…いやバカにどうか救いの手を、寧ろ天にお迎えを要求します
ついでに宇宙規模の鉄槌を下してやってください(目がマジ)

「しょうがねぇ埋めるぞ!証拠隠滅だ」

『…殺すなぁぁぁーーー!!!!』
「あ、…パン、パカパ〜ン♪勇者は息を吹き返した!」

ミツとショウが一斉に大声を発した、しかしその顔はどこからどう見ても土気色(死者)の顔だ
すっかり生気が搾り取られて気力だけで保っている様だ

「……す、すまぬな、叶…御主のチョコ(愛)はしかと受け取った…ぞ」
「えと…ごち…そうさま…お、美味しかったよ…ハハ…」
「おーぃ今にも泣きそうな顔で言っても説得力ねぇぞー…あーぁ…食っちゃったよ、勇者だよ、いや寧ろ猛者だね♪奇跡じゃん生きてるって
スバラシイ!時には辛い人生もトンネル(地獄)抜ければ何とらやってね、あーはぁ高速で言っちゃったよオイ(泣)」

もぉ駄目だぁぁぁぁぁ!!!色んなものが限界寸前だ

「おいミカ」俺は剣呑な目で彼女を睨む

「モミジ…良かったね2人共大丈夫みたいだし安心安心♪」
「不安不安の間違えだろーーーがこぉ〜〜〜のぉ阿呆馬鹿級超クソハイパーレベルスーパー最強ド味音痴がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

今まで(4年前のも含め)の恨み辛みが破裂した
息が荒くなる

「…チッ、何が「あの頃より料理の腕が上達したんだから安心しなさい」だよ?!昔より更に不味さを追求してどうすんだっ!!お前のは
料理じゃねぇ、ポイズン(毒)だ!料理と書いてポイズンだ!!つーかミカぁーお前は今日から今後一切台所に立つな!良いな?!」

ビシッと俺はミカの顔の前に人差し指を突き出した、コイツが作った物は決して人間、この世の生き物に食わせて良いものではない
あれは某殺し屋より酷い、何しろ見た目は普通だからだ、そう言うなればミカの料理はロシアンルーレットなのだ(でも全部ハズレ…)

「…そんな…そこまで言わなくても…、それにちゃんと生きてるんだからセーフでしょう?」
「ゴラァー!(怒)殺すなっつーか確かに死活問題だけどよ…たくっはぁ〜過ぎたもん、喰っちまったもんはしょうがねぇーミカ!お前
口で謝るんじゃなくて体張って謝れ!」
「酷っ体張れって売…
「何でそうなるんだよっ/、土下座だ土下座!地面に頭擦り付けて「こんなクッソ不味い物を食べさせて申し訳ございませんでした」って
全宇宙に向かって謝れ!寧ろ俺に謝れぇぇぇぇぇーーー!!!」
「土下座ぁー?!!冗談止めてよ!何で私が愚民に土下座しなきゃならないのよ?て言うかモミジには謝らないわよ?」
「うっわ最悪なんですけどこの女ー、お前自分で味見したんだろうな?」
「メイド達にしてもらったわよ?皆顔が赤とか緑色に変色してたけど」
「…………。赤は分かるけど緑って…?お前さぁー…」
「そ、そんなに怒んなくても良いでしょぉね?あ、そうだハイこれモミジの分☆これで許してvお願い?」
「…。元凶渡すかフツー…あーもぉマジムカつくんだけどぉっ!」

そう言って俺はおもむろに包みを開けて素早くチョコを一つ取り出し勢い良くミカの口に捻じり込んだ
これで少しはストレスが発散できるってもんだ!

「むがー…ごへぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーー!!!!!!????(立ったまま気絶)」
「……ふぅっカイ、カン(某マシンガン)とりあえずこれで4年前の恨みは解消できたぜ!」

俺は自分の作ったゲキマズポイズンクッキングを食って気絶している親友を横目にそそくさとコタツに戻った

「…こぉっわぁ…、あはははは…」
「…。ドSだねモミジって…とりあえず口洗ってきて良いかな?本人には悪いけど…」
「儂も…我慢してたがさっきから口が変だ」


+++
「ほぃ♪俺からのギリギリ茶色いブツ(笑)」

数分後ミツとショウが洗面所から戻ってきた
2人とも先程より顔色が良い、土気色から生きた人間の肌色に戻っていた
…しかし、恐るべき我が親友のポイズンクッキング……

「…………、ねぇ…これは〜モミジが作ったんだよね?あ、念の為とかじゃないよ、うん」

僕は失礼を承知で訪ねた、怒られるかな…(汗)

「はいほい、ご心配なさらなくてもこれは俺が昨日作ったものだから安心しなさいって♪」
「…ありがとう、口直しに…じゃなくて味わって食べるね…はは」

限界だな、コイツ
まぁアレの後じゃ仕方ないっか

「じゃぁ僕、帰るね また月曜日」
「バイバー♪あ、ついでにミカ連れてって」


+++
「…今日は災難だったな……叶には悪いが死ぬかと思ったぁ〜(泣)」

ミツはマジ泣きしていた、…まぁこれが人(妖)として当然である

「ハハハ…って俺も人の事いえねぇけどな、…昔、俺もアイツのゲキマズ料理食わされて死にかけたもんな〜…本当笑えねぇや」
「…同情するよ!(親指を立てて)」
「ミツ…って何だこれ?」

まったく何なんだ(知るか)

「あ、ミツにも渡さねぇとな…」
「(…そう言えばまだ貰ってなかったな)」

俺は席を立って隣の台所に向かった


「Happyvalentine&Congratulations on the birthday!(バレンタインと誕生日おめでとう)」

いきなりの英語、モミジの手には銀の皿に乗ったチョコレートケーキがあった
あぁ…そっか今日は儂の誕生日か

「すっかり忘れていたよ、えーと…サンキュー」
「It will do very.(どう致しまして)ふぅ〜コレ隠すの大変だったんだからな〜ミツが台所に入る度に見つかるんじゃないかってヒヤヒヤ
だったよ」

「そだ、折角だしキャンドル付けよっか?」
「このままで良いよ」

と言いながらもモミジは何処からか色とりどりの蝋燭を出してケーキに差し始めた
何だ、準備していたのか?
儂は嬉しくてついニヤケた、今日のモミジは優しい

「Happy Birthday to you Happy Birthday to you Happy Birthday dear MITU〜 Happy Birthday to you♪
Congratulations on the birthday!さ、キャンドルを消して」

本当に嬉しかったのだ、こんなに祝ってもらうのは小さな頃以来だ
それも同じ年の女の子に、あぁ儂は幸せ者だ

「ありがとう!(こんな顔はジィさんには見せられんな〜…いなくて良かった)」

「喜んでくれてるみたいで俺も嬉しいよwあ、ケーキだけでゴメンな、しかも材料あり合わせだし…本当はプレゼントもあげたかったんだけど」
「気にするな、それにこんなに嬉しいプレゼントは他にない」

満面の笑み、俺もミツからいいものを貰った気がした、心の中から笑えた

「あ、そだ♪プレゼント代わりと言っちゃなんだけど…


感謝の気持ちをこめた小さなkiss



ポッカーン…

ミツは目を丸くしたままフリーズしている、オイオイたかがキスじゃん?
あ、れれ…?

「ミ…
「モ、ミジ…///御主…その、これは…」
「ぇ?あ…プレゼント代わり?だけど…怒ってる とか?」

恐る恐るミツの顔を下から覗く

「…怒ってはおっ…らん、よ…そのビックリ…した、だけだ…うん…///」
「??…へ?」

俺には彼の言った言葉の意味が分からなかった
どうしてキスされたぐらいでビックリするんだろう…?

「あ…そっか慣れてないんだっけ…?こういうの」

俺はようやく理解した、妖と言えど彼は日本人なのだ
外国を放浪していた俺にはごく当り前の行為なのだが日本人にとっては非日常的な行為なのである
(外国じゃ挨拶するのもキスだからな〜)

「……すまんな…、そのえと…ありがとう///」

ミツは顔を赤くして照れくさそうにお礼を言った
俺はそのお礼にどう致しまして」と笑顔で返した

「…しかしー、外国じゃこれが当たり前って…て言うか口って…///」
「あ、ちなみに口にするのは私にとって貴方が特別な存在なんだよって意味なんだ」

サラリ、と大胆発言
儂は思わず顔を下に向ける、恥ずかしすぎる…嬉しいんだが(複雑)

「…あれれもしかして俺また何か言っちゃった? 友達って意味だよ?」
「友達…? 特別って…友達?」
「そうだけど…?あーもしかしてI love youかと思っちゃった…あ、れれ…ゴメン↓」
「…(本気でそうかと思った思ったよっ!!…何だよーそう言う意味かよぉーー!!)いや、気にするな…うん」

若干落ちこんだ、疲れた

「あっケーキ食べよ!ミツ悪いんだけどフォーク取ってきてくんね?忘れてきちゃった」

俺は元いた席、ミツの反対側の場所にそそくさと戻った

「うむ分か……」

ミツが立ちかけてそのままの姿勢で固まった
お膳に手を添えて腰を上げる途中だ

「す、スマンが御主が取ってきてくれんか…?」
「…へ?良いけど、そっちの方がちょっと台所に近いのに…まぁー今日はミツの誕生日だしな♪」

俺は席を立ってミツの後ろ側にある台所に向かった
フォークは台所のテーブルの上に置いてあった、銀で出来た模様の無いシンプルなデザインのフォークだ


「(…すまんなモミジ、今は理由あって立ち上がれんのだ…いや正確にはたっているが…)」

儂はコタツの蒲団に手を突っ込んで問題児を無理矢理押さえ付けた
全くたかだかアレくらいで固まってしまうとは…情けない、いやマジで(汗)

「さー食べよ♪」
「うむ」

今の気分 
御主も食べてしまいたい

…とは口に出して言えないが