第壱拾弐話 【運命】


2月10日―月曜日の放課後
吹き荒ぶ寒風が肌を刺すように真北から吹いている
余りの寒さに顔をクシャクシャにして目を細める、鼻の頭にあかぎれが出来そうな勢いだ
おまけに今日は手袋を忘れて来ていた、我ながら不覚である

「〜…寒すぎて死ぬかもしれん…うぅう”〜」

ズルル…ミツが青鼻をすする、彼は寒がりである
でも痩せ我慢をしてしまう変な奴だ

「本当…僕ももうヤバイな〜こんなコートじゃ足りないよ」

同じクラスで札遣いの木村彰
先日、ミツまた新たな召喚符を貰ったらしい、先日ミツから召喚符を貰ったらしい…確か鎌鼬だとか


「…寒がりだなーお前ら、俺なんかもう手の感覚無いぞ?ホントやべーな(苦笑)」

指どころか手の感覚が殆ど無い、血の気がないのだ

『それはヤバイって!』ダブルツッコミ
右にショウ、左にミツ、真ん中に俺が並んで歩いている
二人が同時に平手でビシッと肩にツッコんで来た、お前ら漫才師か、息ぴったりじゃねぇか

「御主…手袋も忘れて…て、コートは如何した?朝は着てたであろう?」
「…ガッコに忘れてきちゃった↓不・覚何か頭クラクラする〜」

俺はワザとらしくミツに寄り掛かる、寒い時は人肌が恋しいものである

「あはは…二人、本当に仲が良いよね〜付き合っちゃえば?」

クスクスとショウが笑う、濃紺のコートのポケットに両手を突っ込んで此方を見ている

「冗談!何で俺がコイツとぉ〜?どうせ付き合うならお金持ちのショウの方が良いし〜☆何たって親は売れっ子作家だもんな〜」

そう、彼ショウの母親は小説家である、発行した本はほぼ完売してしまうのだ
そして俺は彼の母の昔からのファンである、だが未だに顔を見たことは無いが
まぁ忙しいならショウだけにしょうがないか(苦ショウ)

「っ///。モミジ…そう言ってくれるの嬉しいけど、お金目当てなの?」

ほんの少し頬を赤らめて目を細める、俺は何気にショウの左腕に自分の右腕を絡めた
身長差は8p、ミツより少し低い彼は軽く上目になるだけで目が合う、普段こんなに側に寄らないからあまり気にも留めていなかったが
確かに子犬の様な感じがしている、何と言うか女の子みたいな顔立ちである、将来が楽しみだ(笑&腐)

「Yes!、なんてな♪冗談、俺男は顔で選ばない方だから〜」
「何が男は顔で選ばないよ、イケメン引き連れてっいい加減にしなさいよね、モミジっ!!」

と、突然背後から俺より甲高い叱責が降ってきた
俺は恐る恐る後ろを振り返る、ミツとショウも少し遅れて背後を見やった
そこに居たのは

「…ミカ…、何で お前が…?」

叶実果子(カノウミカコ)、クラスの学級委員で超セレブなお嬢様である
父は世界的にも有名なカノウ貿易会社の総取締りで、これまた世界的に人気の高い宝石会社の総取締りの令嬢の母を持つ
家はまるでバッキンガム宮殿の如く大きく、敷地も学校を遥かに凌ぐほど広大なのだ
しかし、何故そんなスーパーお嬢様がこんな千葉県の区立中学に通っているのかと言うとそれはただ単に校区内なだけである

「帰り道なのよ!貴女こそ…上位2名をはべらかせて何気取っちゃってるのよ?フンっ」

彼女は意味不明な事を言いながら腕を組んで首を横に振った
何がしたいんだお前は

「…いや、気取ってねぇから、つかお嬢の癖に歩行下校なのかよ車は無いのか車は?」
「うるさいわねっ!!たかが登下校くらいで車を走らせたら空気が汚れちゃうじゃないのっ!それに私、足腰には自信があるもの」

ミカは腰に両手を押し当てて胸を反った、そしてひたと俺を見据えている
その眼は蛙を睨みつける冷酷な蛇の表情に酷似している、彼女は本当に俺の事が嫌いなのだ勿論俺もコイツの事は嫌いである

「…ふ、相変わらずの口調だなミカ、お前さっきから俺達を付けてたろ?何で?」

ミツとショウは恐らく気付いてなかっただろう、俺達が門を出た辺りから気配が一人分増えていた
俺はメノウ姉ちゃんのお陰で普通の人より気配を感じる感覚が敏感なのだ

「………、つっ付けてなんか、ないわよっ!第一何で私が貴女を付けなきゃならないのよ?!勘違いも甚だしいわねもぅ!!」
「…仲直り、してぇの?俺と 俺はもうあの時の事なんて怒っちゃないぜ?」

俺がそう言うと同時、それまで憤怒していたミカの表情が消えた
目を細め、俺達の居る方と反対を睨みやる、その目は迷いの色を浮かべている

「…ねぇミツキ、モミジと叶さんって友達、なのかな?この間は険悪そうだったけど…あ、でも今も険悪か」

多少苦笑混じりにショウが儂に尋ねてきた、と言うか儂も彼女等の事は良く知らない
モミジも叶の事については話に触れようともしない

「さぁな…が、しかしこの喧嘩いつ終わるのだ?」

ミツキは腕を組んでふぅと溜息を吐いた、その顔はウンザリと言うような表情をしている
僕もさぁと言って彼女達の居る方を眺めやった、目線の先では先ほどと変わらず舌戦が繰り広げられている
多少モミジが勝っている様だが

「…っあ…あの時って?」

ミカは動揺した様に唇を引き攣らせた、それでも俺は尚も話を続ける
彼女の目は右に左に泳いでいた

「四年前…―俺達がまだ小学生の頃、忘れちゃねぇと思うけどよ…お前が俺を裏切ったあの日さ ミカは嫌われたくなかったから
親友の俺を見捨てたんだ、だよな?学校中の皆が俺を嫌っていた、生徒教師問わずな…俺が余所者だったから」

小学生の頃俺は忌み嫌われていた、赤毛で左右で違う色の瞳―
褐色の肌、そして人間と思えない刃の様な目付き、入学する約一年前に母さんに拾われたった一年で日本の言葉を覚えた俺
普通の人から見れば異色な存在だ、見てくれは外国人なのにこの国の言葉を流暢に話す俺は

気味が悪い―

「まっ…ガキにしちゃ俺が怖かったんだろうな、当時赤鬼って呼ばれてたくらいだし」
「…………っ、本当は 見捨てたくなんかなかった、だけど
「周囲の目が怖かったんだろ?俺がお前でもそうしたさ、嫌われ者を見捨てて、逃げる―例えそれで自分を信頼してくれる人がいなく
なったとしても…」

モミジの目が曇天の様に暗く曇る、しかし彼女は透通った大きな声で語った
まるで儂等に聞かせるように…儂の隣でショウが口を半開きにして驚愕の色を浮かべている
嫌われていたとは聞いていたが其処までだとは、予想していなかった

「ミカはそれで良かったのか?」

そう言うとモミジは寺のある方へと歩を進めた
一瞬くるりと肩越しに後ろを振り返った、そして寂しげな笑みを浮かべまた歩き出す

「…っ良い訳…ないじゃないっ!!っ…―っ…、っ…」

叶さんが泣いている、モミジの帰っていく方を見つめながら…
北風が痛く肌を刺す

「私だって…あの子を裏切るなんて したくなかったっモミジしか私の事分ってくれる人…いなかった!」
「だったら謝ればいいだろう?」

ミツキだ、彼は泣きじゃくる叶さんの隣に立つと前方を眺めやりそう言った
叶さんは驚いた様にパッと隣に立った彼を見た、大きな栗色の瞳から大粒の涙がボロボロと零れ落ちている

「…火群、君…、そんなの今更出来る訳ないっ! 私あの子に嫌われてるから…今更ゴメンだなんて言えないっ遅すぎだもの…」

更に涙が溢れ出る

「…たくっ意地っ張りだな御主等は」

ミツキが地を出した、だが泣きじゃくる叶さんはそんな事は気にも留めずに

「余計なお世話よっ!!」と捨て台詞を吐いて叶さんはズカズカと帰って行く
残されたのは僕とミツキだけだ

「…〜はぁどうして女ってのはああも口が強いのだろうな?敵わんわ」

苦笑交じりで軽く溜息を吐く、僕も女性の事は良く分らない
と言うか余りそう言うのには関わりたくない

「だがしかし、叶が加われば華が増えるな ん、悪くない」

ズル、思わずコケそうになる
何のことだ

「ショウ、気付いておったか?叶にも御主の様な力がある、妖力紙を使わずとも敏感に感じ取れる」
「…ぇ?それって仲間って 事?」
「うむ、儂にショウにモミジに叶だ、やはり紅一点は必要だ」

ミツキの顔が若気る

「…それ、モミジに言ったら瞬殺さるよ」
「……モミジは華と言うより雑草だ、うむ…いやあまり言うとおらんでも雷が振ってきそうだな」

冷や汗がたらりと垂れる


+++
「〜…後味何か最悪…↓」

鮭の塩焼きを口いっぱいに頬張り不機嫌にそう漏らす

「不味かったかの?今日のは脂がのって旨いのにぃ」
「あ、いや…鮭じゃなくて、ちょっとな」

モミジは深く溜息を吐いた
その時

「なーぉっ!」

軽快な足取りでモミジに近寄ってくるメス猫の鈴(スズ)
モミジの愛猫であり相棒だ

「鈴っおま、最近見ないと思ったら何処行ってたんだよ?」

そう言いながら三毛猫の背を撫ぜる、鈴はひょいとお膳に前足を乗せ食卓を覗き込む
モミジは鮭の切り身を一口分取ると左手に乗せ鈴に与える
三毛猫は顔を横にしながら不器用そうに食べる、鈴は猫の癖には大食いな方だ、飼い主に似るとはよく言うが

「にっ」鈴は俺の掌にのせた鮭を食すと更に欲しがるように右前足を俺の左手にちょぃと置く
そして上目で顔を覗く込んでくる、大きくて左右で違う目が「くれ」と言っているように見えた

「ダーメ、これ塩辛いからもう終わりな?」
「にぃ〜…」

鈴はショックそうに顔を下に向け目を眇める、俺はそんな鈴の頭を数度撫ぜた
特に手入れもしてないに毛並みの良い触り心地だ、少し油ぽい
鈴は何時もより甘えてきている、普段なら餌を貰ったらすぐに何処かへ行ってしまうのに
一瞬不安が過ぎる

タッと、鈴はまた何時もの様に何処かへ行ってしまった
俺はホッと安堵の顔をした、不安なんてきっと気のせいだ

「…何だろうな、今日は本当変な日 何だろう…」

俺は小さくそう呟いて手元を眺めやる、何故だろう少し、震えていた
先程過ぎ去った不安がぶり返す、ふと前を見ると二人が心配そうに俺を見ていた
俺は無言で小さく微笑した、だがしかし何だろうこの焦燥感は…

「大丈夫かモミジ…?さっきの事か?」
「あ、いや…」


その時、キィィィっと窓の外から大きなブレーキ音が轟いた


俺はすぐさま立ち上がり居間すぐ隣の客間の襖を勢い良く開けて窓に向かい外へ出た、寒いにも拘らず裸足で

「っ?!モミジ?何だ…」

儂はモミジがいきなり窓から出たので驚いた、隣にいるジィさんも唖然としている
一体何なのだ?とりあえず儂も窓から庭へ出た





…、急いで駆けつけたのにも拘らず其処は悲惨な状態だった
先程のブレーキ音は恐らく大型車のものだろう、小さな紅の水溜りが徐々に大きくなってゆく…

道の端に立てられた今にも消えそうな街灯がじじ、と音を立てて暗い闇を仄暗く照らす
道路の真ん中に小さな赤い塊が横たわっている

先程までは生き物だったものが、ただの物になって

「………………………
…?」

不安が確実なものに変わった
相棒が―
んだ

「…ごめんな鈴、今まで…苦労かけた、な……ごめん…」

涙は出ない

昔泣きすぎて枯れてしまったからだ

俺は小さな体を抱え上げその頭を何度も 撫ぜた
胸の奥が苦しい、呼吸がしずらくなる、でも涙が出ない

思い切り泣きたいのに

俺は鈴から視線をそらして暗い闇天を仰いだ、この事実から逃げたかったのだ、嫌だから
俺は視線を戻すと立ち上がり家路に向かった、ふと横に立つあかりの灯っていない空き家を一瞥した
少し前まで俺と鈴が暮らしていた家、嫌な思い出が脳裏に蘇り滅える

「っ…も、モミジ…?それ、鈴っ…?!!」

彼女は小さなその腕に鈴を抱えていた、その小さな体は血で真っ赤に染まっている
儂は斜め下を見やり小さく溜息をした、直視できない

「…そうか」

ジィさんはその小さな三毛猫を憐れみの目で見つめていた
皺の深い目元が一層シワシワになっている、何と声を掛ければ良いのか迷っている様だった
モミジは鈴をそっと玄関の端に置いた、小柄な手が微かに震えている相棒を喪って今にも泣きそうな顔だった
だが、彼女は泣かなかった、ただひたすらに辛い気持ちを抑えている様で

「鈴…明日俺とお前が初めて出会った場所に埋めてやるからな……でも…アイツはいないんだ…鈴アイツに良く懐いてたのにな…っ」

彼女は微笑して鈴をもう一度撫でた
モミジがこんな顔をするのは初めてだった


「…モミジ…、その…」

恐る恐る声を掛ける、慰めてあげたいが言葉が見つからない


「いなくなったよ、鈴が…自由気ままで甘えたさんで気が向いた時にしか姿を見せない、俺そっくりだよ全く…5年か、長いようで
短かったな、鈴見つけた時さアイツビニール袋に入ってたんだ、公園の樹に括られて白い袋がモゴモゴ動いてて何だろうって思わず
その袋開けてみたんだ…したらさー小さな仔猫が突然飛び出してきて驚いたねー流石に…しかもさアイツ俺のランドセルに乗っかって
しがみ付いてんだ小さな爪を立てて、ダチが剥がそうとしても全然離れてんなくて、仕方が無いから俺が飼う事にしたんだー勿論
内緒で…、それから俺と鈴は相棒って訳」


下を向いたまま語っている、だがその表情は先ほどの泣きそうな顔じゃなく少し笑っていた
儂は頷きながら彼女の話を聞いた

「まだ長生きできたのに…寂しいなー…、俺が親戚中盥回しにされた時も必ず付いて来てくれたっけー落ち込んでる時は引っ掻いてでも
元気付けてくれたんだよなぁ…寒くて堪らない時はいつも抱っこしてたっけ…、温かかったなー…っ…ってアイツとの思い出が走馬灯の様に
出てくるしー…あーぁ駄目だ駄目だ!落ち込んでたら鈴から怒られるぞ俺!うん!アイツばかりがダチじゃないだろうに先へ進まなきゃなー
俺の時代は動き出したんだ…うん……」

モミジがギュッと拳を握り締めた
俺の時代?、儂は思わず彼女に問い掛けた、モミジは儂の方へ顔を向けゆっくりと顔を上げた

力強い表情だ

「あぁ…俺の時代、嫌われてるからってずっと一人でいた…鈴がいたから友達なんて要らないって思ってた、でも間違ってた
今気付いたよ…鈴は独りぼっちの俺を心配してた、もう心配させないからな、俺ここから動くよ…!」

拳を一度開いてグッともう一度握った今度は両手だ
曇り色の瞳に光が差した様に見えた

「…、元気になったな」
「心配してくれてありがと、ミツ」

彼女はニコリと微笑んだ、笑っていたがその表情はまだ何処か不安定なままだった

儂は改めてモミジの強さを知った




+++
2月11日 火曜日―
放課後…
白鳥公園(近所の公園)

「…お別れだな鈴、バイバイ……っ」

俺は鈴を見つけた最初の場所、公孫樹の木の下に鈴を埋めた
丁寧に小山を盛って頂点に太い木の棒を十字の形にして深々と刺した

十字の棒に鈴のしていた赤い首輪代わりのリボンを風に飛ばされないようにしっかりと括りつけた
ずっと巻いていたものだから大分色褪せて茶色の様な色になっていた、恐らく事故の時の血も付いていたのだろう

「…モミジ」
「ミツ、付き合わせてゴメンな…彰も」

俺は立ち上がり二人のいる後ろに向いた、二人共曇った表情(カオ)をしていた

「なぁ〜に暗い顔してんだよ?俺は大丈夫だから!」

「…本当に?」
「泣いてもいいんだぞ?」
「…―」

慰めの言葉は嬉しいが、俺は泣けないのだ

「…こんな所で何してるのよモミジ?」
「ぇ?」

突然の質問、声の主は叶実果子だ
俺はバッと彼女の居る方、左側のフェンスを見た

「また二人といるし…そんなにその二人が好きなの?」

首を斜に構え片目を眇めた厭味な顔だ

「違ぇーよ、鈴を埋めに来たんだよ、死んじまったから」

俺も眉根を寄せて厭味に返す

「ぇ…鈴ちゃんが?嘘でしょう…?」

ミカは目を大きく開き驚愕している
それもその筈、鈴を見つけたときに居たダチとはコイツの事なのだ

「あぁ…トラックに跳ねられてな、コイツ等には悪いと思ってるけど、一人じゃ心細くてな、悪ぃかよ?」
「…―ねぇ私も、手合わせていいかしら…?」
「良いよ、鈴お前に良く懐いてたからな」

俺は微笑してミカをそこに招いた
ミカはぐるりと回って公園の入り口から入ってきた、公孫樹の樹はこの公園に一本しか生えていないのですぐに分る
彼女は公孫樹の木の下にやって来ると小山を一瞥し、俺を見据えた
俺はミカが見てきた数秒後に小山を見つめた、二人の会話は無い

「…天国でも元気でね…―」

ミカは目を瞑り両手を合わせてそう小さく呟いた、そしてすぐさま立ち上がりまた俺の方に向き直った
その顔は真剣の表情をしていた、俺もミカのその表情に緊張した、彼女が話そうとしている事が分るような気がしたから…

「…………モミジ、昨日の質問の答え…私は嫌だった、その…そ、その…ゴメンねモミジっ!!」

バッ、とミカが頭を直角に下げた、あまりに勢い良く下ろしたものだから首の後ろで二つ括りにした髪が後頭部に綺麗に乗っかった
俺は彼女が謝ってきた事も驚いたが、勢いの良い髪の方が可笑しくて思わず鼻で吹き出すしてしまった

「…っははっ昨日言っただろ、俺は怒っちゃいないってよ♪ま、ミカが謝ってきた訳だし一応元通りだ、な、俺も色々悪かったなゴメンよ…」
「……モ、モミジ…、アリガト アリガ…トウ…うっぅ…あぁー……」

ミカが泣いた、彼女は良く泣く性格だ小学生の頃から喧嘩をしただけですぐに大泣きでそれで喧嘩は即中止って言ってる場合じゃないか
俺は彼女の方に向かってミカの肩を両手で触れた、5cmくらい高い彼女の目線に合わせて上目になった
ミカの頬には涙が滝の様に流れていた

「…うん、うん、これからは仲良くやっていこうぜミカ」

俺は満面の笑みでミカにそう言った、ミカも笑顔で返してきた



鈴ーミカが戻ってきたぞ!!



心の中で大きく叫んだ、本当に嬉しかったから

「…良かったね二人共、もうこれで喧嘩する事はないんだね」
「そうだなーモミジも友が戻って来てくれて嬉しそうだしの」

冬の空が黄昏色に染まってゆく
風は冷たいがとても心地良かった