第壱拾壱話 【閑話−優】
1月22日 水曜日―やっぱり寒い、風も強い
「クゥィー!!吹っ飛ぶしっ」
今日は風がとにかく強い、半端無い
そして寒い
「…早く帰ろうでコタツにダッシュだ!」
向かい風に立ち向かいながら俺は家路を急いだ
神社の本堂が見えてきた、あと1分もかからない
―っ寒かった!〜コターツ」
玄関の戸を開くなり靴を慌てて脱いだ、冷え性の俺には応える
今の襖を開き鞄を下ろしコタツに入った、温かい
「お帰りモミジ、早いなー」
「おぅただい…ミツ?!」
何故かミツが居る、俺は一番乗りで教室から出たのだ
なのに、何でコイツが此処にいる?同じクラスでさっきまで居たような気がするのに…
「何でお前が居るんだよ?」
「早退した、知らんのか?担任に言ってあるのに」
「聞いてねぇよ 何時帰ったんだ?つーか具合でも悪いのか?風邪?」
「頭が痛い…風邪だろう、な 2時限目が終わった後に帰ってきた…アタマ痛↓」
ミツは頭を垂れて唸っている、服は着替えたのだろう分厚めの黒いトレーナーを着て、ジーンズを履いていた
「…馬鹿だなー痛いなら寝てろよな?薬は飲んだ?ちゃんと手洗いうがいした?」
俺は珍しく世話を焼いたように彼に尋ねた
ただの同居人とはいえ心配だ、と言うか俺にまでうつされるのは御免だし
「薬…無かった、手は洗ったうがいもした 2階は寒いから嫌だ」
「…あのな、っしゃーねぇなぁ…隣に布団敷いてやっから、薬も買ってくるから」
「すまぬな、有難う」
「おおきに」
居間の隣は客間だ、それもかなりの広さがある、本間で八畳だ
俺が初めてこの家に来た時もその部屋で寝ていたが広過ぎて落ち着かない
+++
―たっだいまぁ〜」
二度目の帰宅、時間は6時前、あと5分でアニメが始まる
「…お帰り…二度目だし(苦笑)」
「ツッコミはいいから、ほれ薬だ!コレ飲んで寝ろ」
俺は早々彼に薬を投げた、小さな箱に入った瓶薬、水は既に用意してあった、そしてバタバタと早歩きで台所へ向かう
おっとその前にテレビのスイッチをONにするのを忘れちゃダメダメwww
居間にあるテレビは台所の正面にあるので料理をしながらでも見れるのだ、ちなみに俺が移動させた(オタクですから)
「(…ま〜に合った★マジカルチョコちゃん毎週欠かさず見てるからな〜ぬふふv)」
キチンとやる事はやっても中身はオタク、抜かりはない
同居人2人には既に公認済みだwww
+++
「…腹減った…ジイさんも居ないし〜↓まだかな…頭痛ぃ↓↓」
ススゥ…襖が開く、モミジだ
手には土鍋を持っている、粥だろう
「おたませーなーんにも無くてさぁ仕方ねぇから葱と白菜のお粥な」
「すまぬなモミジ あまり食欲がないからシンプルな方が良いよ」
「質素で悪かったな、…そー言やジイちゃんは?もう7時前なのに…」
今気付いた、いつも居る筈のジイちゃんがいないのだ、買い物にしては遅すぎる
それに何の連絡もない、何でだろう…
「…………そう言えばおらん な、俳句の会にでも出てるんじゃないのか?会長だろうジイさん」
「かなー…あっ、そう言えば今朝今日は信州に御祓いしに行くって言ってたっけ?うん…忘れてたわ」
あまり気に留めていなかったのでスカッリ忘れていたのだ(オイオイ)
ゴメンジイちゃん(苦笑)、信州と言えば林檎だ…って豆知識かよっ!
「…という事は帰って来るまでモミジと二人きりか…あー粥旨いぞ御主良い嫁になりそうだな〜なんての」
白い粥をレンゲで口に運びながら彼はそうボヤく様に言った
俺は思わず頬を赤くした、ミツはナチュラルで結構単純な奴だまぁ、先日の事もあるほんの僅かだが彼を意識していた
特に恋と言う訳でもないが…でも好きではある
「…何言ってんだよバ〜カ☆ハハハsunx〜♪また風邪引いたら作ってやるよ」
「〜そんな何度も引くかよ」
食欲旺盛、顔色も良い…ちょっと赤い?
「?…顔赤いよ?熱あんの?」
寝込んでいるのだから熱があるのだろう俺は体温計を取りに行く前にミツに寄り掛かり右手で彼の額に触れた
いつもは髪で隠れて見えない額が顔を出す温度はやはり高め、仄かに熱かった
その額は白桃の様な薄紅色をしていた男の癖に綺麗な肌である
「…っ///いつまで触っておる?」
「あっ…悪ぃ、37?くらいかなー微熱だけど熱あるよ?明日は休みな、今日はゆっくり寝て早く治せよミツ」
7時少し前―
後は自分の夕食だけだ、面倒臭かったので白菜を醤油と砂糖とで甘辛く煮て茶碗一杯に白飯を盛って食べた
あまり食欲が無かったので三杯でやめた…まぁ普通の人よりは大食いだけどね(苦笑)
「…一人で食うメシ、虚しいなーしかも水7(アニメ)もねーし…↓特番ビューティビフォーアフターって思いっクソパクリやん」
「…」←俺
「ツッコミは何処ぉぉ〜!!あぁーさーびーしーいー!」
『いや〜んワテキレイになってもうたぁ〜』
虚しくテレビが鳴り響く、心の中で「知るかっ」と思わずツッコんだ
相方(ミツ)が居ないだけでこんなにも静かなんだと実感する
「(…ここ来る前は家にいても独りだったからなぁ…俺は飯を作るだけのタダのメイド、本家に居た頃も殆ど扱いは同じだったからなー
俺がダチ作っただけで虐待されるし…酷い時は日本刀振り回すし…本当有り得ねぇよ緑川は…メノウ姉ちゃん大丈夫かな)」
幼い頃、7年前
俺が日本に来た頃の話、俺は如何いう経緯でそうなったのか今でも分らないが林檎の箱に入って日本にやって来たのだ
6歳の俺はその箱の中で寝ていたらしい、それを研究員だった育ての母、紫(ユカリ)が偶然寄った青果市場で俺の入った林檎の箱を
開け、如何いう理由でか幼かった俺を引き取り緑川の家に連れて来てくれたのだ、そして俺の物語は始まった
来てすぐは当然言葉も環境も分らず戸惑っていたが、幼かった所為もありすんなりとなれる事が出来た
日本語は母が教えてくれた、読み書き生活に支障の無いように様々な言葉や文字を教えてくれた、母は英語と仏語と独語が話せたお陰も
あり外国語しか知らなかった俺も新たに日本語という言葉を覚える事が出来た、今では生粋の日本人より日本語が得意だ
勿論、外国語もスラスラだ、ちなみに俺は英語、仏語、独語、伊語、中国語、露語、ギリシャ語…が分る
まぁ、各国を旅していたのだから当然だが
「御主色々苦労してんだな〜つーか、どんだけバイリンガルなんだ…」
背後から寝ている筈のミツの声がした、俺はびっくりして思わず小さく「わっ」と声を上げた
恐る恐る後ろを振り向く
「…ミツ…、如何したんだよ…?寝たんじゃないのかよオイ」
「御主がくれたこの薬、眠くならんみたいだぞ?」
ポカン、だから何だ?お前は病人なんだから大人しく寝てろっつーの!
拗らせて肺炎になったら大変じゃねーかよ
「…ミィツー!!馬鹿かよアンタはっ!」
「だってー気分も良くなったし…アレ?」
ゴゴゴ…モミジの背後から暗雲が立ち込めている、なんだかツノが見える…怒っている、本気で怒っている
「お前なぁー!!俺が折角心配してやってんだ…テメェは大人しく寝やがれつーのっ!!寝ねーんなら押し倒してでも寝かせてやるからな!」
「ひぃっちょちょちょっと…モミジ?目がマジなんだけどー…ぐぼがっ!?」
俺はミツの後ろ襟をグッと掴んだ、頸がグイっと上に持ち上がる
目が飛び出たようにカッと開いていた、ジタバタとモガくがそんな事はお構いなしで俺はミツを隣の客間に敷いた布団の上に
ブン投げた
ポーン、見事に着地、ナイスコントロールである
「っ…痛ぅぅー貴様っモミジ何し…
「大人・しく 寝てろ!!尻の穴に縦笛ブッ挿すぞっあぁ?」
「わーわーわーっ///ストップストップ!寝るから、大人しく寝るからーホントマジすまぬー!ゴメンナサイっ!!m(_ _;)m」
儂は必死に額を布団に擦り付け土下座をして謝った
モミジの顔が仁王像に見えたから…
「…分った、じゃぁ寝るまでいてヤるよ、覚悟しな」
「いや…やるのやの字が間違ってない…?つーかマジですか↓見張りかよオイ」
「喋るな、次ぃ声だしてみろ犯すぞ?!鳴かすぞ!?」
「だーかーらっまだ深夜じゃないつーのっ!///女子の癖に下品な奴だな御主はぁー」
ミツは胡坐をかき左肘を立てて頬杖をつき溜息を吐いた、病人の癖にデカイ態度だ
俺は思わず彼を押し倒した
ドシン、下に布団がある所為か衝撃は少ない
「え…?モミジ…?マジ」
「ムカついたからマジで?!」
「…ちょっ///目がイッてんだけど…っ///」
彼の股間を摩る、勿論ハラ慰せ
本気で犯す毛頭気は無い、ちょっとした悪戯だ
「…はぁっ///止せって……モミジ…うっ///」
「ははは言う事聞かないお前が悪ぃんだよ裁かれやがれ(下手な演技だなー三文芝居だし)」
風邪を引いてる所為でマジに見えた、顔まで赤くして熱が上がったのだろう
俺の言う事を聞かないで起きていた天罰だ、俺は調子に乗ってズボンのチャックを下ろした(オイ)
しかしそこには思いも寄らぬアレな光景が目に映った…
「っ…何をしておる///変態か御主っ…」
////////////…。コレ以上は言えない(恥)
何で、えー男って冗談でも感じるのかよオイ、そう言えば少し膨らんでいたような↓
俺はとりあえず下ろしたチャックを上に戻し…上がらねー
「…ごめん、冗談だから///あ、オヤスミー!」
俺は素早く立ち上がり客間を出て襖をバンと勢い良く閉めた
「///……、ってフザケルなーー!!///つーか中途半端で行くなぁー//////」
牡狐の雄叫びが虚しく響き渡る
いやー青春だね★(逃げます byモミジ)
*あとがき*
初めての閑話…。これギリ大丈夫だよな…?例の関係者さんこの話はあくまでちょっとした悪戯ですからねっ!(何故にツンデレ)
皆は風邪を引いたら大人しく寝ようね♪